青春×××群雄劇(仮)(bsr×RE!) | ナノ
そういえば、と優は画面を眺めたまま、言葉を紡いだ。その手は器用にマウスを動かしキーを弾く。
「B組の副担にリボーンが入るみたいだよ」
「…!!リボーンさんが?」
獄寺も山本も一瞬虚を突かれたような顔をした後本当か、と優の顔を見つめる。優は複雑そうな顔をして頷いた。
優だって、その家庭教師に同じ事を言われた際、余りの衝撃に固まったものだ。そしてギリギリまで綱吉には言わない事まで約束させられた。額に押し付けられた銃口を思い出して優は肩をぶるりと、震わした。あれは約束というより、脅しに近い。家庭教師の―何よりも生徒を虐めるのが愉しくて堪らない―と思うサディスティクな性癖は即刻治すべき、だと優は思うが口には出さない。額に穴が開くのだけは勘弁して欲しいのだ。だが、綱吉が事実を知った時の事を考えては優はへこむ。彼はきっと相当な反応を見せるだろう。なぜならあの、家庭教師だからだ。獄寺はうん、と顎に手をあて、何かを考え込んでるようで。そんな中流石と言うか、なんと言うか山本だけはニカリ、と笑った。
「ボウズなら安心だな!」
「やーまーもーとー。」
優はそんな山本らしい感想に苦笑を溢し、獄寺?とその顔を伺った。
獄寺は眉間に皺を寄せ、とても深刻な顔をしていた。
何か問題があっただろうか、と優も少しだけ不安になる。
「そうか。」
「なに…?」
「リボーンさんはこの学校で十代目の傘下を増やすおつもりなんだ!」
流石リボーンさんだ!とキラキラ目を輝かせる獄寺を見て優ははあ、とため息をついた。何て言ったらいいのやら。そんな優に山本は笑顔を向ける。
「優も嫌じゃないだろ、な?」
「う、ん?ま、私は楽しい毎日が過ごせたらいいや。例え平穏無事じゃなくても、」
優はうんうんと遠い目をして頷いた。山本は優の頭をガシガシと撫でた。扱いがまるでペットの犬のようだと優は思った。
「――ピィ。」
飛んできた雨燕が小さく鳴いて山本の肩に止まった。遠く聴こえてきた人の声に優たちはさっと、目配せをする。獄寺は苛立ちげにチッと舌打ちを溢した。
「優!」
「あと少しだって」
そう言って優はまた素早くキーを打ち出していく。その顔に焦りの色は見えない。
「速くしろバカ!」
「バカって言ったほうがバカなんだからね?」
だんだんと近づいてくる足音を余所に優はふあ、と欠伸を噛み締め呟いた。
「…perfect!」
*
「…人の声が聞こえたように思えたが、」
気のせいか、と初老の警備員は首を傾げPC室の扉を閉めた。
「何が完璧だ、何が!」
獄寺は優の手を引っ張りズンズンと歩いていく。優はただ引きずられるという状態になっていた。
「うるさいなぁ、獄寺は!全然大丈夫だったじゃん。」
「あと三秒遅かったらバレてたんだぞ!」
優ははあ、と息をついて山本に助けを求める。
「獄寺もそんな怒んなって!な?やっぱ、優はスゲーのな!」
ニッと笑う山本に獄寺も毒気を抜かれたようで、ガシガシと髪を書き上げた。
「あー、優よくやった。」
優は照れたようにえへ、と笑った。
「そりゃあもう!ツナの為だもん!やったね、これでまた一緒だー!」
優は嬉しげにそう声を上げて、獄寺と山本の腕をとって走り出した。何だかんだ言っても獄寺たちの気持ちは同じて、三人は早朝の中、並盛までの道を走っていったのだった。
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