青春×××群雄劇(仮)(bsr×RE!) | ナノ
「僕は二年、竹中半兵衛だよ」
優と幸村は半兵衛に勧められるがまま、保健室のベットに腰かけた。
柔らかいベットに腰かけながら優はふーん、と辺りを見回して物思いにふける。
「(科学研究部なんて、あったんだ。
…てか、ここはどう考えても保健室だよね?)」
半兵衛は保健室の丸イスに座り、ふっと微笑んだ。
市はその隣でじっと優の顔を見つめていた。
「それで彼女が織田市…とまあお互いの事を知り合うのも追々としようか。
それじゃあ、早速この用紙に名前と所属のクラスを書いて」
入部届けと書かれた紙を渡された優と幸村は一呼吸おいて、顔を見合わせた。
「…あの、待ってください。」
何だい?と首を傾げる半兵衛に優は少しだけ申し訳なさそうに眉を下げると、入部届けをスッと返した。
「私たち、科学研究部に入部するつもりはないです。」
キッパリ、ハッキリとそう言い切った優に半兵衛は驚いたように瞳を揺らし、やがてふう、と小さくため息をついた。
「それは困るね。科研部は今廃部の危機なんだ。」
けほ、っと半兵衛は咳を一つ溢した。
「そうなんですか。…でも悪いですが、私たちこれっぽっちも入るつもりはないです。
そもそもここに来たのもある意味事故ですから。」
「…そう、それなら仕方ないね。」
断固入りません!という意思を固める優を見て半兵衛は諦めたように、哀しげに笑った。
ジクジクと胸に広がる良心の痛みを無視して立ち上がった優の耳に、するりと流れ込む言葉。
「…市のせいなの、全部っ…市が悪いの」
「え」
ずーん、と真っ黒なオーラを漂わせた市がそこにいた。
まさにこの世の終わり、というように悲観にくれる市。
「…ごめんなさい兄さま…ごめんなさい…長政さま…。市が…市が悪いの。」
「あの、」
「市が、市が…」
さめざめと泣く市を見て優の胸にグサリと何かが刺さった。
「真田く…」
「…ふっ…く、ひ、っく。」
優が困ったように幸村を見やれば、幸村もぼろぼろと涙を溢していた。
「ちょっ、」
涙を流す二人に挟まれ、ええ!と慌てだす優の肩を半兵衛はぽん、と叩き穏やかな顔で一言。
「市くんを救えるのは君たちだけだよ。
科研部に、入ってくれるかい?」
救うなんて大袈裟な、と思った優だったが、涙を流す二人を眺め最後は渋々と、頷いた。
そんな優に半兵衛は満足げに微笑んだ。
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