なんでこうなったのか、考えても考えてもわからねえ。
ただ当初の苛立ちが頭からすぱっと消え去ったのは確かだ。





22:17、コンビニ近くのガードレールにて。この逢瀬が一体何度目になるだろう、羽田はここ数週間を振り返り軽く目眩を覚えた。

「なー羽田、プリッツ開けてい?」
「…ああ」
「よっし。じゃとりあえず一袋だけなー」

いや、ああじゃねえだろ、自らにそんな突っ込みを入れて隣を見遣る。悠長に菓子の袋を破り、一気に2本を口に加える達海の姿に溜息を隠せない。何故こうなったのか。お互いそれはよく理解していない。






達海と羽田が偶然出会った夜。羽田は怒りをぶつけたが達海には受け流され、逆に意外な一面を見て何も言えなくなってしまった。そのちょうど一週間後、また同じ場所で二人は再会する。気まずげな雰囲気の中、達海は突然、

「腹へらない?」

そう言って羽田をコンビニに連れ込んだのだ。呆気に取られる羽田をよそに、食べ物を確保し勝手に会計を済ませ雑談会が始まった。数分して「また会えるかもね」と言い残し、達海は去って行った。それから毎週同じ時間に外に出ると、彼と出くわす。
余談だが二度目の再会後、帰宅して見た財布の中身が若干減っていたことには青筋を立てた。ご丁寧にレシートまで入れやがって。





「それにしてもジーノはもうちょっとやる気出さないかな」
「あれでも去年より出てんぞ」
「えーうそだー」
「てめ、俺が知らねえわけねえだろうが」
「あ、そうだね」


「村越っていっつも恐い顔してんだぜ」
「…お前のせいじゃねえのか?」
「いつかハゲるねありゃ」
(村越さんが不憫すぎる…)



あの険悪さはどこにいったのか。第三者が見れば目を疑うだろう。それほど二人の間に流れる空気は穏やかだった。
それをぶち壊すかのように突然、達海は行動を起こす。

「てかさ、羽田連絡先教えてよ」
「は、あ?」

いきなり何を。狼狽する羽田を置き去りにして達海は指を立てた。

「だいたい毎回外で会うのって微妙じゃん?連絡先知ってたら楽だしさー」
「なんでお前に教えなきゃならねえんだよ」
「え、何嫌なの?」

羽田はぐ、と言葉を詰まらせた。嫌かと言われればそうでもない。ただ理由が見つからない。相手はあの達海で、たまたま会ったから話してるだけだ。だがそのたまたまが毎週続いているのは何故だ?ぐるぐる考えが止まらない。そんな自分を笑いながら達海は。

「いいじゃん。今度は俺のとこで話そうよ。ここちょっと寒いしさ」

そんな風に誘うのだ。







理由はわからない。ただその日は




少し寒い夜だったから、
ポケットの中の携帯を握っていた




(つまり俺は悪くない)





20101223







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