とにかく視界が広かった。
ピッチも観客席も相手選手もチームの選手も、全部自分のものになったみたいだった。
今日は調子がいい、そう思って前を見ると皆が自分を呼んでいた。笑いながら手を振って。ひとつ笑みを零して、そこへ向かおうと一歩踏み出す。



つもりだった。



がくん、
音を立てて傾く身体。反応もできず衝撃に備えきつく目を閉じた。しかしいつまで経っても身体が地につかない。ゆっくり目を開ければ、すでにピッチの上に倒れていた。そこで漸く気付く。これは夢だ。


(…夢ぐらい思い通りになればいいのに)


ごろり、仰向けに転がる。夢のくせに空は快晴で、それに拗ねたように目を細めた。
太陽が眩しい。
すると光を遮るように顔に影がかかる。逆光でその表情は見えない。

でも分かる。

そいつに向かってにし、と笑うと相手も表情を緩めたのか空気が揺らぐ。差し延べられた手を、握るために腕を上げた。









「起きたのか」

まだはっきりしない頭に囁くような声が降る。達海はちらと視線を向けると、すぐに布団に包まってしまった。苦笑しながらも後藤はその固まりに手をかけ、軽く揺する。

「…んー、まだ眠い」
「今日出掛けるんだろう?ならそろそろ起きないと」
「腰が痛いんですー誰かさんのせいで」

ぐ、と詰まるような音が聞こえる。どんな顔をしているか想像がつき、達海は隠すことなく声をあげて笑った。
昨夜は久しぶりに仕事が一段落して、お互い貪るように身体を重ねた。最後の方は自分が何を言ったのかも覚えていない。ただひたすら名前を呼んでいた気はする。気絶するように眠りについたから本当かは分からないけれど。
達海が布団から顔を出すとやはりなんともいえない表情の後藤が頭を抱えていた。後悔したような恥ずかしそうな、それでいて嬉しそうな、そんな顔。

「後藤、」

小さく呼びかけると、抱えていた頭を上げ申し訳なさそうに眉を下げる。じっと瞳を見つめたまま達海はゆっくり手を伸ばした。

「ん」

後藤は不思議そうに首を傾げながらも達海の手をとった。熱がお互いに馴染むように行き渡る。夢では感じられなかった暖かさが今ここにはある。

「ねえ、ごとー」
「なんだ?」
「気持ち良かったねー」
「!?…そうだな」

照れながらも握りしめる力を強くし微笑む後藤に、達海も満足そうに笑った。


外は快晴、お出かけ日和。









20101216







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