・本音と建前の続き?かも
 え、成田さんてこんなんだっけというツッコミは受け付けません。生暖かい目で閲覧お願いします。









「久しぶり、成さん」

ああ、お前は

「元気そうだね」

変わらないな。達海。










薄暗い店内。周りは小声で会話を楽しみ、カウンターの二人を気にする者など誰もいない。お互いそれなりに顔も知られていると思っていたが、杞憂だったらしい。達海も初めは珍しそうに店内に視線を向けていたものの、数分すれば我が物のように腰を落ち着けている。相変わらず何を考えているのか分からない。成田はそっと息を吐く。

「どうしたの」

突然声をかけられ、一瞬溜息を聞かれたのかと焦る。取り繕うようにグラスを煽る。
何から話すか。何を話したかったのだろうか。

「…別に」

裏返らないか内心穏やかではない。グラスを持つ手に力が入る。それに気付いたのか、分からないが達海はいつもより小さな声で話を続けた。

「別にじゃないでしょ。成さんてばいきなり連れ出すんだから。有里がすごい顔してたよ」
「…有里?」
「俺の横にいたやつ。明日うるさいだろうなー」

達海の口から女の名前が出たことに心が揺れた。確かに腕を掴んで車に乗せようとした時いたかもしれない。ただ必死だった。こいつしか見えていなかった。

「彼女か?」
「まさか。広報だよあいつ。だいたい今そういうのいないし」
「……」
「え、そんなこと聞くために俺のこと掠ったわけ?」

そんなわけないだろう。吐き捨てるように呟いた。達海は嫌な笑みを浮かべると、ゆっくりグラスに口づける。喉が上下する様に思わず目が離せなくなる。


ブラウン管越しの邂逅だった。日本にいるのは知っていた。だが会うつもりはなかったし、興味を持つこともなかったのだ。ただ、テレビにたまたま映った横顔に、なぜか目の前が真っ白になって。ETUのクラブハウスに車を走らせていた。今思えば誘拐にしかならない。達海が大人しく着いてきたのは幸いだ。

「飲んじゃったし今日帰れないじゃん。部屋でも取ってんの?」
「…これから頼むつもりだ」
「なんでもいいけどさー。明日送ってってね」

にやにや笑いながらグラスを傾ける。暗に自分と泊まると言う男に目眩がしそうだ。
昔からそうだ。人の気も知らず、振り回すだけ振り回して。憎くて仕方ない。ぶつけるように抱いてもただ笑うだけで泣きもしない。その余裕がむかつくんだよ。
苛々する。だからだろうか。




「お前は、いいのか」

余計なことを口にしてしまった。
達海は訳が分かっていないようで、目を瞬かせる。その表情にかつての彼を重ねた。相手が何かを言う前に続ける。

「前からそうだった。お前、俺を誰かと重ねてるだろ。好きでもない、しかも男に足開くなんてどうかしてる」
「じゃあなんで成さんは俺を抱くの?」
「お前が嫌いだからだ」
「俺は好きだよ」
「男がか」
「違う。成さんがだ」
「俺はお前が嫌いだ」
「じゃあなんで会いに来たの?」

言葉は出なかった。言い訳が思い付かない。黙り込む自分に、達海は俯いた。

「俺は誰とでもセックスできたし、誰にどう思われようとどうだってよかった。本当に欲しい人には届かないんだから」
「でも、成さん覚えてる?あんた俺に言ったんだ」
「言わなきゃ伝わらないって、あんたが言ったんだ」

そんなこといつ言ったのか覚えていない。本当に自分がそう言ったのか。達海に視線を向けても、俯いた横顔では表情など読みとれない。それでも声はまっすぐ響く。心臓が痛い。

「俺は、成さんが好きだよ」

会いにくるんじゃなかった。
憎いから、全て奪ってやりたかった。ぐちゃぐちゃにして、こいつより優位に立ちたくて。
だがそれ以上に、本当は達海猛が欲しかった。その目が写す全てを見てみたかっただけだ。誰かの代わりだったとしても、それでも。

「……いいのか」
「なにが?」
「次代わりにされたら俺はお前に何をするか分からない」
「いいよ。するつもりないし」

その言葉を聞いて立ち上がる。何も言わず歩き出したが達海は静かに着いてきた。それだけで満たされる気がするなんて、俺はおかしいだろうか。










「ねえ成さん。なんで俺に会いに来たの?」
「そんなの、」


どうしようもないくらいぐらい惚れてるからに決まってるだろう























「とりあえず10年分はヤるからな」
「…殺さないでね」






20110106






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