CLOCK ZERO | ナノ

「撫子、今月は何があるか知っておるであろうな」


昼休みの中等部の中庭で私と終夜はいつもみたいに食事をしていた。
中学3年の私と本来なら高校生の中学2年の終夜。
私たちは以前から周囲から浮き気味ではあった。多少大人になったのもあって協調性を持とうという意識は強まってはいた。
でも忘れもしない3年前の出来事で、私は更に周りとの違和感を感じることが増えていた。
だから最終的にはこうして学年の違う二人はだいたい一緒に行動して、結果的にクラスにはあまり馴染んでいないというのが現実としてあるのだが。


「えっと…あれね、クリスマスの事考えていたでしょう」

「なに、私の考えは見破られておったか」


そしてもう一つ、昼休みに一緒にいないと恋人との時間が作れない、という現実問題があった。
歳より上にみえる儚げな容姿として売り出してる人気モデルの終夜と、医学部進学を希望して外部の高校受験を考えている私。
二人が一緒にいられるのは学校の中くらいしかないのだ。


「でも終夜、確か撮影じゃなかった?私も8時までは塾にいるし…」

「ああ、だから8時以降に会いたいと思うておる」


お母様から一応言われている門限が9時だから、きっと色々しているうちにその時間は余裕で超えるだろう。
でも、だめか?と聞かれて、だめとは言える訳もない。


「もう、仕方ないわね。それじゃあ24日は8時過ぎにデートね」


内心嬉しくてたまらなかったけど、建前として渋々了解した私の態度は終夜に見破られていたらしい。終夜は花のような笑顔で私の頭を撫でてくれた。
私もそんな終夜に甘えるように、終夜の肩によりかかる。
見た目よりもしっかりした終夜の肩は私だけの特等席。
見上げるだけで終夜の顔が間近で見えるこの場所が大好きだった。


「撫子に嫌だと言われたら身投げでもしようかと思ったぞ」

「そんな事言って。私が断らないことくらいわかってたんでしょ」

「まあな。……今年もクリスマスを二人で過ごせて嬉しいと思う。クリスマスは恋人の日と決まっておるだろう?」

「またどこかの本の知識でしょう。ふふっ、でも、そうね」


特別な日を特別な人と過ごせる日常がとても脆いものだと知っているから。
傷とは違うけど、いつも気持ちは曖昧で不安定だから。
そして終夜が終夜だから。

だから全てが愛しい。


曖昧で不安定な


実はクリスマス関係なかったお話。この二人の思春期もっと見たいです
次の更新は多分クリスマスのお話…だと思います

title:Largo
11.12.22