「ゆき」
「瞬…にぃ?」
見慣れた自室のベッドからの風景。違和感があるとすれば視界に色素の薄い灰色の髪の毛がちらつくことだ。
「おはようございます。ゆき」
「おはよう…」
どうして部屋に?そんな表情を浮かべると瞬はにこりと昔と変わらない笑みを浮かべる。
「ほら、今日はデートの約束でしょう」
瞬は嬉しいという気持ちを隠す事なくゆきに向かってさらけ出す。
ゆきは異世界とこの世界を救って、消えてしまうはずだった未来すら与えてくれた。
そんな、訪れるはずが無かった未来を生きているから、大事な大事な人と一緒にいられるから、溢れる思いを抑える必要がないから、瞬は変わった。
いや、変わったというよりもっと自然になった。
「うん、そうだね。瞬兄は楽しみ?」
「ええ、あたりまえです」
「ふふっ…そうだね」
こうやって瞬が楽しそうに笑ってくれるのがゆきには嬉しくて、そんなゆきが瞬は愛おしかった。
「それじゃあ俺は先に下に降りてます」
「うん。私もすぐ行くね」
「急がなくていいです。ゆっくり来てください」
「うん。ありがとう」
瞬はゆきの好きな朝ごはんを作りに、ゆきは瞬が似合ってると言ってくれたワンピースに着替えて、二人は今日という日をむかえるのだった。
この幸せの唄を
title:空想アリア