※死ネタ注意です。
満月に照らされた桜が恐ろしいほど綺麗な夜。
私の手を重ねていた貴方の手は突然さらさらと零れていきました。
ついに貴方とお別れの時が来たのだとすぐにわかりました。
最期は泣かないで見送ると決めていたのに涙は拭っても拭ってもとまりませんでした。
ごめんね、君の涙すら拭えない僕を許して…愛してるよ。僕たちは何があってもずっと一緒だから……
そういって貴方は……総司さんは満月に吸い込まれるようにして去っていきました。
ふわりと優しく微笑んだまま舞って逝った貴方は私が今まで見てきたものの何よりも儚くて美しくて、いつの間にか涙がとまっていました。
いいえ、涙の流し方を忘れてしまったのです。
しばらく時が切り取られてしまったようでした。
あまりにも幻想的で残酷な現実でした。
四半刻前は一緒に桜を見ていたのに。
半刻前には一緒に愛を囁いていたのに。
今、貴方を感じられるのは掌に握っている灰だけ。
そんな現実が信じられませんでした。
だって今でも鮮明に貴方の顔が、声が、温もりが、全部思い出せるのですから。
「そう……じ…さん」
自分で呟いた言葉の弱々しさに驚きました。
こんなにも私は貴方に依存していたのですね。
夜空に手を伸ばせば貴方に届く気がしました。
しかしようやく掴めたのは貴方の腕ではなくて花びら1枚だけでした。
涙で花びらがにじんで見えます。
忘れてしまった涙の流し方は案外簡単に思い出せたようでした。
総司さん、総司さんと強く叫ぶと、どこからか声が聞こえてきたようでした。
ちづる、ちづると風にのって聞こえてくる小さな声は、大好きな貴方の声にそっくりでした。
その声で私は気付きます。
本当はどんな姿の貴方でも一緒にいたい。
でも私がこんなに泣いてたら、きっと貴方は近藤さんのもとへ会いに行けなくなる、と。
だから私は総司さんに届くように大きな声で叫びました。
「総司さん……っ!!私は大丈夫です!」
嗚咽が混じっていたと思います。もしかしたら余計に貴方を不安にさせたかもしれません。
「貴方を…ずっと、ずっと、お慕いしています……生まれ変わっても…っ…貴方をお慕いします……」
軌跡
貴方との歩みを抱いて、私は…