愛し愛されて生きるのさ




船長室へ届けられた贈り物たちが、部屋の隅にこんもりと小さな山を築いていた。言わずもがな本日十月六日が誕生日である、船長ローへのクルー達からのプレゼントである。


何せ今は海上を行く船上の生活だ、きっと一つ前の島でめいめいがこっそり買い求めた品々なのだろう。綺麗にラッピングされた大小様々な箱へじとりとした視線を向けながら、ナマエはソファの上で小さく膝を抱えていた。



「……みんなずるい、私だってちゃんとプレゼント用意してローさんの誕生日祝いたかった…」

「何でお前が拗ねてんだ」

「だって誕生日も知らなかったとか…!」



悔しそうに眉を寄せながら、お門違いだとは分かっていながらもローに噛みつくナマエと、彼女が淹れたコーヒーを飲みながら同じソファでゆったりと寛ぐロー。空いた左手はナマエの髪の毛を撫でつけるように、彼女の頭の輪郭をなぞる。



「まぁ聞かれなかったし、わざわざ自分から言うもんでもねェしな」

「…ごめんね、ローさん。何も用意出来なくて」

「別にもう構わねェって言ってんだろ」

「でもさ、好きな人の誕生日なのに…」

「どうしても何かしてェってんなら、これやるよ」



しょんぼりと肩を落とすナマエへ差し出されたのは、真っ赤なリボンが巻かれた不織布の包み。それは確か、先ほどシャチがローへと持ってきた誕生日プレゼントのはずで、何故これを私に?とでも言いたげなナマエの眼差しが、訳知り顔で笑うローへと向けられた。



「…でも、これって…」

「開けてみりゃ分かる」

「……!」

「ご奉仕してくれんだろ?」



リボンを解いて開けた包みから出てきたのは、白いエプロンが付いた黒地のワンピース……いわゆるメイド服である。ニヤリと口端を持ち上げながら、ローがナマエの顔を覗き込む。何でこんな物が!という彼女の心の叫びは、見事にスルーだ。



「えっ…でも、え?これ着るの!?」

「せっかくだ、使わねェと勿体ないだろ?」

「…う、」

「存分に祝ってくれよ?メイドさん」

「……はい」



唯一船内で誕生日プレゼントを用意出来なかった身として、拒否権なんてナマエには最初から無い。満更でもなさそうなローの表情を見てしまえば、喜んでもらえることそれ自体が嬉しくて。結局は惚れた弱みか、素直に従ってしまうナマエだった。


たまにはこういうプレイもアリだろ、と舌舐めずりするローの聞き捨てならない危険な台詞は、もうこの際聞かなかったことにしよう。






愛し愛されて生きるのさ






HAPPY BIRTHDAY!LAW★
2012.10.6



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