きっと愛とかそんなもので形成されている





「ねーロー!アレやって!!」



久しぶりの島への上陸。情報収集のついでに本屋へ出向こうと町を歩いていた俺のパーカーをクイッと引っ張る小さな手。


傍らを歩くマリアの腕に抱かれているチビ助が指差す方向を見やれば、父親に肩車された小さな子供の姿。



「あァ?ベポにでもやってもらえ」


「やだー!ローがいいのぉー!!」


「お前、この間ベポが父親でいいって言ってたじゃねェか」


「ゆってないもんー」


「嘘吐け、舌引っこ抜くぞ」



ハロウィンの日にマシュマロを口いっぱい頬張っていた子リスみてェなチビ助の姿を思い出せば、クツクツと笑いが込み上げてくる。



「こら、我がまま言っちゃダーメ!パパはツンデレだから人前でああいうことは出来ないのよー?」



喉を震わせる俺の隣でわざとらしく困ったようにメイに言い聞かせるマリアが、チラッとこちらを見てきた。


――チッ…何だよ、アレをこの俺にやれってか?


マリアの挑発的なセリフと視線に、自分でも眉間にしわが一本増えたのを感じる。

後ろを歩くベポとシャチがくすくすと忍び笑いを零しているのも気に食わねェ。


フン、二億の賞金首がのんきにガキを肩車して散歩?笑わせるな。



「絶対やらねェからな」


「ローのけちぃー」


「うるせェ」


「ハゲー!」


「ハゲてねェよ。つか誰に教わったんだ、んな言葉」


「シャチー」


「ちょっ…コラ!い、言うなよっ!!」


「……シャチ、後で覚えてろよ」



腹いせ混じりに低く唸ってやれば、後ろからひぃっと息を飲む声が聞こえた。



「シャチのこといじめちゃダメなのぉー!」


「俺に命令するな」


「むぅー…」


「ちょっとロー、子供相手にムキになんないでよ」


「……チッ」



咎めるようなマリアの視線から目を逸らし舌打ちを打てば、目一杯短い手を伸ばすチビ助が俺の帽子を掴もうとしてきた。



「っおい、こら危ねェだろ!」



咄嗟のことにマリアも上手くバランスが取れなかったようで、メイの身体はマリアの腕から半分以上落ちかけている。


慌てて不安定な体を掬い上げれば、パッと花のような笑顔を咲かせてチビ助が笑った。



「ひゃはっ!ローのだっこー!!」


「……」



仏頂面の俺の顔の真ん前で無邪気にはしゃぐメイの真っ直ぐな笑顔が眩しくて。

視界から遠ざけるように、俺の首の後ろへその小さな身体を乗っけてやった。



「…落ちねェようにちゃんと掴まっとけ」


「あいあいっ!」



その体勢が意図せず肩車の形になってしまったことには幸い誰もツッコまなかったから、俺も知らんふりする。


――まァ、こんな一日もたまには悪くねェか。





きっと愛とかそんなもので形成されている





title / にやり
2010.11.07



リクエスト下さった子梅さんに捧げます\(^O^)/ハロウィンのお話気に入って下さったようで嬉しかったです!このパパローさんとおチビちゃんは今後連載も予定してますので、良かったらそちらも楽しみにしてて下さいね!
今回は本当にリクエストありがとうございました★




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