セクハラ その2




「あぁあ〜暑いなぁ…」



もう9月だというのに、この暑さは一体何なんだろうか…!

店頭の掃き掃除と倉庫からのストック出しを終えれば、エプロンの下のTシャツが汗でぐっしょり濡れるのが分かった。

…やだ、下着透けちゃうから着替えたいな。でないと、またあのセクハラ店長が…―



「へェ…ピンクか。まぁまぁだな」


「!!」



背後から聞こえてきた気怠げながらもわずかに愉しげな色を滲ませる低い声に、聞き覚えがありすぎてウンザリする。



「悪くはねェが、黒のレースが俺好みだ。覚えとけ」


「いや、全力でお断りします」


「あァ?ツンデレか。今更流行らねェぞ、ナマエ」


「…はぁ〜、デレた覚えはな…っひゃあ、ちょっ!店長ッ!!」



つつつー、と背骨を這うように指先を滑らされて思わずヘンな声が出てしまった。


咄嗟に両手で口を覆って店長を睨み上げれば、性犯罪者級にニヤついた笑みを浮かべて…こうだ。



「いいな、その反抗的な目つき…ソソる」


「きもっ!!」




相変わらずバカなことを言っている店長には付き合ってられない、とサッサと店内へ戻ろうとすれば―…



「おいナマエ、休憩室の冷蔵庫にアイスあるから食っていいぞ」


「…え、ホントに?」


「あァ、暑い中頑張ったご褒美だ。15分休憩して来い」


「あ、ありがとう…ござい、ます…?」



ペンギンさんじゃあるまいし、急に紳士的なことを口走り出した店長を、訝しむ気持ちが無かったと言えば嘘になるが…まぁここは素直に甘えておこう。


休憩室に入り冷蔵庫を開ければ、確かに小さな冷凍スペースにはアイスの箱。



「あっ!これ新発売の練乳アイスだー。食べてみたかったんだよね〜」



8本入りの箱をおもむろに開封して、ピリッと小包装のビニール袋を破る。

パクッと先っぽをくわえてシャクッとかじると、中からとろりと練乳が溢れてきた。



「んーおいひぃー」


「…おい、いきなりかじるか?もっとこう周りを焦らすように舐め回してからだな、」


「……」



ちょ、いつの間にやって来たんだ…セクハラ店長。ていうか謀ったな…?

くっそー、甘い言葉には裏があるって本当だったんだ。



「あァでも、練乳にして正解だったな。赤い唇と白濁色のコントラストが…クる」


「店長、お願いですから逝って下さい」


「…おまっ、結構大胆だな。まぁそんなとこも可愛いが…じゃあ遠慮なく、」


「そっちのイクじゃありません、ジーンズ上げて下さい」



何なんだ、このベタなやり取りは…!勘弁してくれ!もう、いや!!今日こそ辞めてやるっ!



「ペンギンさ〜〜ん!店長がまたセクハラする〜〜!!」






そしてエンドレスに続く
セクハラ奮闘記






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