セクハラ その6




【ハート薬局 業務日誌】

2011年8月2日(火) 晴れ 気温32℃

今日はトイレットペーパーの特売日。
朝からお客さんも多く、昼過ぎまで途切れることなくレジはフル回転。
なのに店長は店番をペンギンさんに押し付け、姿をくらませていた模様。
特売用で発注していたトイレットペーパーは全て完売。
追加発注分10カートン完了。



「――っと。…てか、ホント店長ってばどこ行ったんだろう…」



業務日誌を書き綴っていた手を止め、事務所のテーブルでぼんやり独り言ちていると―…チクチク背中に感じる、ねちっこい視線。

バッと勢いよく入り口の扉を振り返れば……居た。



「ちょ、そんな所で何やってんですか店長!今日一日忙しかったんですよ!?」

「何だナマエ、ようやく俺の存在の大切さに気付いたか?」



普段着のパーカーとジーンズ姿の店長が、両手を広げて「俺の胸に飛び込んで来い」ポーズを取っているが、無視だ無視!いちいち相手にしてたら、こっちの身がもたない。



「勘違いしないで下さい。変態の手も借りたいほど忙しかっただけで、店長の存在価値なんて道端に落ちてるエロ本以下です」

「おまっ、仮にも愛しい恋人への台詞か?泣くぞ、俺は」

「いやいや、いつ私たちが恋人になりましたか!」

「今朝、俺のベッドの中で」

「それ夢の中の話って言うんですよ?」

「しかしお前、道端に落ちてるエロ本は男子小学生の宝だぞ?」

「話を逸らすな!しかもしょーもなっ!」



腹立たしい。気付けばまた変態店長のペースに巻き込まれるところだった。


悔しいので背中を向けて業務日誌に集中する。これを書き終えたら今日の仕事はもう終わりなんだから!よし、集中集中……しゅう、ちゅう…



「――…って、もう!何なんですかさっきからッ!!」

「あ?いや、お前に似合うのはどれかと思ってな」



真剣な表情で、両手にいくつか持った女物の下着(認めたくはないがパンツだ)をかざして見比べる店長。

その対象が自分自身だということが、余計に気色悪い。実に不愉快だ。



「セクハラです。ていうか何で店長がそんなの持ってんですか!」

「ナマエ、知らないのか?今日はパンツの日なんだぞ?」

「え、なにそのキョトン顔!むかつく!」

「お前、昨日のおっぱいの日は休みだったろ。盛大に祝えなかった分、パンツの日は奮発しようと思ってな。プレゼントだ!」

「まじで馬鹿なんじゃないですか、ていうか何をどう祝うつもりだったのか怖くて聞けないよ!」

「遠慮せず受け取れ!礼はパンチラでいいからな」



ニヤニヤ笑う店長の頬に渾身の右ストレートをお見舞いしてから、ペンギンさんに言いつけに行ってやった。






8月1日はおっぱいの日
8月2日はパンツの日

今日も元気に変態日和







2011.8.2





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