番外編4 薬剤師と花屋




ここはよくある商店街の中の薬局、いや…最近はドラッグストアって言うのか?

まぁいい、とにかく幼馴染のローが始めたこのハート薬局はそれなりに繁盛している。


性格にやや難はあるものの、その恵まれた容姿からローは昔からモテた。ロー目当ての女性客も少なくはない。

しかし最近、女に関しては来る者拒まずだったローが一人の女に執着している。――この薬局でアルバイトをしているナマエだ。


ナマエは気立てもよく顔も可愛らしい。正直ローには勿体ないと思うが、幼馴染としてローの成長を嬉しく思う気持ちの方が強い。

まあ、あの歪んだ愛情表現は如何なものかと思うが―…



「おいナマエ、お前の午前中の仕事はこの棚をきっちり掃除して整理することだ!」


「……別に陳列、乱れてませんけど?」


「チン、っておま…」


「店長、死ぬか黙るかどっちかにして下さい」


「フフ…気の強い女は嫌いじゃねェ」


「私、変態な男は嫌いです。てかもっと他にやるべき仕事があるでしょ」


「バカ野郎!女目線でどのコンドームがいいか、とかあるだろ!その感覚を陳列に生かすんだ、ナマエ」


「……知りませんよ、てかマジでセクハラです」



避妊具を陳列している棚の前で押し問答を続けるローとナマエ。

毎日繰り返されるくだらないながらも平和な二人の姿を横目に見つつ、掃除道具片手に店頭へ出た。





「おはよう、ペンギン」


「!――あ、ああ。おはようハナ」



背後から掛けられた聞き覚えのある声。振り向かずとも誰だか分かる落ち着いた声に、ガラにもなく心臓が小さく跳ねた。


面倒がるローの代わりに顔を出している商店街の集まりで、言葉を交わすようになった花屋のハナだった。



「どうしたの?」


「いや、…配達帰りか?」


「うん。あ…そうだ、防水の絆創膏ある?」


「ああ、どうしたんだ?」



切り花を作る時にドジった、と顔を歪めるハナの指先を見れば。血はもう固まってはいるが、2センチくらいの切り傷が出来ていた。



「結構ざっくりいってるな、ちょっと来い」


「え、…わっ、ちょっと!」



グイと引っ張ったハナの手首は思いの外細くて頼りなく、ちょっとでも力を込めれば簡単に折れてしまいそうだった。


不思議そうにこちらを見つめながらも、店の事務所へ向かう俺の後を大人しくついてくるハナ。


途中――未だ避妊具の陳列棚の前で騒いでいた店長とナマエがこちらを凝視していたが、今は無視だ無視。



「ねえペンギン、絆創膏さえ売ってもらえたら自分で手当て出来るよ?」


「いいから、そこ座って」



ハナの言葉を遮ってそう言えば、渋々といった様子で事務所のソファに腰を下ろした。

そのハナの隣に並んで、傷口に消毒液を染み込ませた脱脂綿を押し当てる。



「…っ、ぅ」



液が染みたのか少しだけ辛そうに眉を寄せるハナの表情と、細く吐き出された吐息に、不謹慎だと分かっていながらも意識を奪われた。

……別に俺は、ローみたいな変な嗜好は断じて無い…はずだ。



「…そういう顔、するな」


「は?何言ってんの、ペンギ…、っ!」



怪訝そうにこちらを見上げるハナの瞳に映ったのは、熱の宿った眼差しを向ける男。


絡み合う視線はそのままに――導かれるまま、触れる熱の柔らかさをゆっくりと味わった。






キミを手に入れる為に何をすればいいか分からなかったので、手始めにキスから始めてみました。





(ちょっ店長、押さないでよ!)
(バカ、見えねェだろうが)
(きゃっ!どさくさに紛れてどこ触ってんですか!)

((…頼むから…邪魔をしてくれるな))






2011.3.20



ペンギン大好きなさっちゃんへ捧げます\(^o^)/ ひそかに好きだと言ってくれる方が多いハート薬局の番外、ペンギン編でした!相変わらずの変態店長とそのセクハラに悩む店員&クールで紳士な(はずの)薬剤師ペンギンさんにプラスして、新キャラ登場です(´∀`)今後、同じ商店街で営業を営む他キャラを登場させても面白いな〜なんて書きながらニヤニヤしてしまいました★




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