番外編5 夏祭り このグランド商店街は、小さいながらも個性的なお店が集う活気のある商店街だ。 年間を通してみても商店街の組合主催で、様々な催しが行われている。お正月の餅つき大会に始まり、四季折々のイベントで集客を増やそうと頑張っているわけだが。 最も集客率が高く盛り上がるのは―…何と言ってもこの"夏祭り"だろう。商店街の通りに出ているテントの下では、各店舗ごとに趣向を凝らした出店が並んでいた。 我がハート薬局は毎年、救護コーナーを受け持っていて…ついでにその横でベポ風船の出店(これは完全に店長の趣味だ)も出している。 ちなみにロビンさんちの花屋さんが総合案内所を担当していて、エースさんの探偵社が迷子案内&捜索係で。あとは――、 「よう、ナマエちゃん!」 「ナマエーシャンクスんとこのイカ焼き食ったか!?コレすんげーうめェぞ!」 「あ、エースさんにルフィ君」 噂をすれば、仲良し兄弟の登場だ。ルフィ君、両手にイカ焼きの串を握りしめて嬉しそうだなぁ。 でもこの二人がここに居るってことは、迷子案内所が無人になってるけど……まぁいっか。細かいことは気にしない、うん。 「ナマエちゃんその浴衣よく似合ってんな〜!一枚写真撮らせてもらっても…」 「エースさん、今度はうちの店長にいくら貰ってるんですか?」 「…えっ、とー…ハハ…あ、サンジんとこのワッフル食うか?」 「もうっごまかさないで下さいよー。…でも、ワッフルは頂きます!」 ぎくりと顔を引き攣らせるエースさんに免じて、今回はワッフル一つで手を打つとするか。 ちなみにエースさんから奪った熱々のワッフルは、サンジさん渾身の一品!外はサクッと、中はしっとりメープルシロップが染み込んだ絶品だ。おいひい、もぐもぐ。 さて、エースさんの言う通り今日の私はいつものエプロン姿ではなく…白地に藍色の大輪の花が咲く浴衣を着ている。 実は私だけじゃなくて、商店街の女性従業員はみんな浴衣姿で接客することになっているのだ。 この暑い中、帯で締め上げたこの格好は結構キツイのだけれど…こんな機会でもないとなかなか浴衣なんて着る機会もないし、案外楽しんでいたりする。 ――まぁひとつだけ文句があるとしたら、いつものことではあるんだけど―…… 「……店長、3秒以内にその薄汚い手を退けて下さい」 「おい、ルフィ。お前そのイカ焼きのタレでベトベトの手、さっさと洗って来い。ナマエがご立腹だ」 「ちょ、あんただよ!今まさに私のお尻を鷲掴んでる、刺青の入ったあんたの手のことですよ!」 「え?」 「え?じゃない!!ていうか、いつ来たの!もう手伝わなくていいからどっか行ってて!」 「そんなこと言っていいのか?お前、俺の華麗な応急処置を見たら惚れるぞ?」 「応急処置する事態に陥らないのが、まず一番ですから」 「…チッ、つまらねェ」 「残念がるな!見せ場を作ろうとするなッ」 つまらなさそうに唇を尖らせるセクハラ店長が、一瞬でも可愛く見えたとか…私の脳みそはいよいよ暑さで溶けかかっているのかもしれない。ああ、恐ろしや。 「まァそんなことより、だ。おいエース、ナマエとのラブラブツーショット頼むぞ」 「任せとけ!」 「え、はっ?ちょ、勝手に……ッ!」 「しししっ!ナマエ、顔真っ赤だな!リンゴ飴みてェだ!」 抵抗する間もなく、腰を引き寄せられて。ジョリジョリくすぐったい髭の感触に驚いた時には、すでにバカップルよろしく頬っぺにちゅーなツーショット写真が、エースさんの一眼レフカメラに収まっていた。 はしゃぐ変態、ときめき夏祭り (浴衣やべェ!手に伝わる感触だけで勃ちそうだハァハァ) (くたばれ、変態!!) 2011.8.12 |