番外編2 ハッピーバースデー




今日は私の誕生日!にもかかわらず、いつも通り朝からバイトに励んでたワケで。貧乏暇ナシって本当なんだよね、うん。

しかもさ、あのセクハラ店長ってばシフト組む時になんて言ったと思う?


『どうせ干物女のお前に誕生日の予定なんてねェーだろ』


これセクハラとか云々通り越して、完全なる侮辱だよね。ほんっと最悪!



「つーか何で私の誕生日を知ってんだっつーの…!」



一日の営業を終え、レジ金を数えながらブツブツ文句を連ねていると…

突然店内の照明が消え、流れ出す軽快なミュージック。


一体何事だと暗がりにジッと目を凝らせば、消えていた入口の照明がパッと点灯してアホなポーズを取る一人の男を照らした。



「…何やってんですか、店長。サタデーナイトフィーバーごっこ?」


「ナマエ、さぁ俺の胸へ飛び込んで来い!!」


「すいません、今お金数えてるんで一人で遊んできてもらえますか」


「そして俺がお前の誕生日を知ってるワケは、履歴書を舐め回すようにチェキしてるからだ…!」


「無視かよ。てか、独り言盗み聞きしないで下さいよ」



さっきまでパーカーに白衣姿だったはずの店長は、何故か真っ白なスーツを着ていて。
それが異常にキモいんだけど、意外と似合ってるのも妙に腹立たしかった。



「まぁそう言うな。お前のアパートの部屋番号もちゃんとチェキしてるからな!」


「きーもーいー。今日から戸締りしっかりしよっと」


「おい!いつまでレジ締めにかかってんだ、さっさと終わらせろ」


「うわっ、いきなり横暴!じゃあ邪魔しないで下さいよ、もう!」



勝手なことばかり言ってくる店長を無視して、レジ金を金庫にしまう。エプロンも外して帰り支度を始めると、待ってましたと言わんばかりに事務所のソファーにふんぞり返る店長に名前を呼ばれた。



「ナマエ、ほらよ」


「わ!…っと、え?」



投げられた紙袋を覗けば、可愛らしくラッピングされた包み紙が顔を出す。



「…これって…」


「誕生日祝いだ、遠慮せず受け取れ」


「店長…」



思いがけないプレゼントに目が点になった。いつもセクハラ三昧の店長に、従業員を気遣う優しさがあったことが嬉しいのだ。



「ナマエ、ケーキもあるぞ。これは俺からのプレゼントだ」


「ペンギンさんまで…!」



お店を抜けてどこかへ行っていたはずのペンギンさんもいつの間にか戻って来ていて、美味しそうなホールケーキを持って笑っていた。



「あ、ありがとうございます…!」



例年通りひとり寂しく誕生日を過ごすことを覚悟していたので、こうして祝ってもらえるだけですごく嬉しい。



「おい早く開けてみろ、それ」



ケーキを切り分けるペンギンさんの横で、子供のようにわくわくとした様子でプレゼントを指差してくる店長に思わず笑みがこぼれた。

いきなりのスーツ姿も誕生日祝いの為だったのかと思うと、胸の奥がやけにくすぐったい。



「もーせかさないで下さいよ〜。こういうリボンとか大事に取っちゃうタイプなんですよね、私………って、何これ……」



丁寧にラッピングを解いて広げた包装紙の中、出てきたプレゼントに絶句した。


何だよ、この『使用感ゼロ!うすうす0.03mm』って。
何だよ、この『硬さは男の勲章!マカドリンク』って。
何だよこの、その他もろもろコスプレナース服やら猫耳やらは。



「それらを含めて、今夜の俺がプレゼントだ!喜べ、いや悦べナマエ!」


「っ…素直に喜んだ私の気持ちを返せ!この変態店長っ…!!!」



バチーンと景気のいい音を立てて店長の頬っぺたに出来た真っ赤な紅葉は、翌日も消えなかった。






Happy Birthday★
プレゼントはもちろん、俺!







顔を真っ赤にして怒りながらも、ケーキだけはしっかり食べて帰ったナマエ。

その後ろ姿を見送ったハート薬局の事務所では、呆れ顔のペンギンが大きくため息を吐きながらテーブルの上を片付けていた。



「…ガキの頃から素直じゃないな、ローは。ふざけてないでさっさと渡せば良かったんだよ」


「……うるせェ。…あーくそ、痛ってェ…」



腫れた頬に氷を当てながらソファーに身体を預けるローの手には、白いリボンのかかった水色の小さな箱。


中に入った煌めくネックレスがナマエの首元を飾るのはいつになることやら…。





2010.12.19



リクエスト下さったまり緒ちゃんに捧げます\(^O^)/ハート薬局の番外で「誕生日祝い」とのリクエストだったんですが…店長がおバカですいませんw『プレゼントはあ・た・し』をどうしてもセクハラ店長でやりたかった…!後悔はしてない(`・ω・´*)そしてアホ店長登場の場面は、SWで金獅子のシキがダンスで登場するシーンをイメージしてもらえれば幸いです(笑)
今回は本当にリクエストありがとう★




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