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「かわいい、私のうり…」
「へ、いか…っ」

赤い、赤い、地面のうえで、あの人は嗤ってる。
僕を抱きしめて。いや、僕の顔を美しい指先で押さえつけて、真っ赤に沈む仲間たちを見せつけられる。
殺したのは、陛下。

「綺麗なものは傲慢で、醜いものは卑屈だ」

だから、うりのようなのが一番手間取らせなくて好ましい。
そう言って、僕の祖国を消した。



ヒトリ贄を出せば助けてやると陛下は言った。
贄に望んだのは、ただただ凡庸な者だった。
陛下の思惑など誰一人わかりはしなかったが、ただ言われるままに凡庸な人間を差し出した。
僕は陛下の贈り物として、御前に差し出された。
僕を目にとめた瞳、その声で問われる

おまえが、私の贄か?

僕が はい と膝を折れば、美しい顔でうなづくと、一刻あとには誰一人息をしていなかった。
何がおきたか理解ができなくて、呆然とする僕に陛下が笑いかける。
「なまえは?」
「ぁ、…、うり」
「うり。わたしのうり。もう予備はいないのだから、イイコにしているがいい。」
この人は最初からすべてを消すつもりだったのだろう。
そして、逆らえば僕もこの赤い海に沈む。
僕は逆らう勇気なんて持っていないし、自決するような高潔さも持っていない。
圧倒的な力に媚びるしかできない。
そんな僕だけが残るように陛下が仕向けた。長く長くおもちゃで弄べるようにと。

誇りも、なんにもない。哀れな僕のお噺。

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