ザクセンとプロイセン
  



※東ドイツ=ギル
※ぷーなギルはいないよ!
※簡潔に言うと捏造ばっか、ってこと





この現状を受け入れようとしている彼が嫌だった。



家族が東西に分断され、しまいにはぶ厚い鉄のカーテンが境界に佇み私たちの溝を深くさせた。

次第に国民は一つの国であった事を忘れ、生まれてくる子達はこの状況が当たり前であると認識するようになる。

そして他の兄弟たちも各々別の道を歩もうとし始め、その結果西も東も順調に経済力を高めていった。



『お前はそれで本当に良いのか、プロイセン』



殺風景な部屋にある椅子に深く腰掛けている者に、私はどこか強い口調で言葉を投げ掛けた。

問い掛けられた亡国は気だるげにその赤い瞳を細め、私の言葉が気に入らなかったのか現役時代ほどではないが殺気を込めながら睨む。

しかしそんな殺気に怖じ気づくほど私は弱くはないし、この決意を変えるつもりは毛頭ない。


寧ろその殺気を倍返ししてやる位の勢いで睨み返すと、その視線を受けた彼は不機嫌そうにため息をついた。



「この現状に不満があるということか?」

『ああ、ありまくりだ

今こそは景気が良いが直にそれもなくなり不景気になるだろうし、そうすれば市民の不満が高ぶる事は目に見えている


何より私達は元々一つの国だ

それが他国の身勝手な理由で分断されて不満に思わないわけがないだろう』



あくまで冷静に淡々と言葉を紡げば、奴は不自然に私に対する軽蔑を滲ませながら口元を歪ます。

そして長い足を組み替え刺すような視線を向ける彼に、私は言い様のない不愉快さを覚え眉間に深くシワを寄せた。



「バカバカしい」



殴らなかった私を褒めてほしい。


せり上がる罵詈雑言を無理やり胃に押し込み、爆発しそうになる怒りを慌てて静める。

必死に押さえつけた拳は感情に任せて強く握り締めたせいか血が滲む感触がした。


そんな私を見て何も言い返せないと思ったのか、奴は先程よりも機嫌の良さげな声音で次の言葉を紡いだ。



「俺等はあの時、別々の道を歩むと決めたんだ

そうなった以上あいつはもう家族じゃねぇ、資本主義を掲げる敵国だ」



それは無意識に近い行動であった。


今まである程度あけていた距離を詰めるように大股で一歩、二歩と歩き机を境にふんぞり返る若僧に更に近付くために机に身を乗り出す。

驚愕で微動だにしないかつての強国を尻目に私の手は奴の襟元を離しまいと、それこそシワが残る程に強く掴む。

それを自身の方へと引き寄せてしまえば奴の首は閉まり、この国(私は認めないが)の概念でありながらも人の構造を成す彼は苦しそうに顔を歪めた。



『…今のお前には殴る価値すらないな、東ドイツ及び亡国プロイセンよ』



こんな家族泣かせに手をあげたら私の誇りを民の誇りを汚してしまいそうで、私は怒りに震える手をゆっくりと離した。

離した瞬間、奴は咳き込み必死に息を吸い苦しむ肺を落ち着かせようとする。


今の彼にかつての軍国の姿はなく、我が土地を半分ほど割譲させられたり宣戦布告もなしに急に攻め入れられた憎きプロイセンは今や社会主義の犬と成り果てた。

当時は憎くて仕方がなかったけれども、あの急成長ぶりにはその頃から羨ましいと思っていたのに。


なあロシアの野郎がベルリンに侵入して来てからブランデンブルグが姿を見せないんだ、ベルリンは今も尚あの鉄のカーテンに苦しめられているんだ。

何故だ、何故だ何故だ何故だ何故だ何故だなんでなんでなんでなんで――、


渦巻く全ての感情に蓋をし、濁った誇りを失った紅い瞳を見つめた。



『お前に見せつけてやるよ、ザクセンの意地をな』



家族を助ける為ならコイツをプロイセンをギルベルトを消すことをいといはしない。




この後、月曜デモに繋がります




2012/10/05 07:37

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