ザクセンとデンマーク
  


※暴力表現あり






分かっているのだ、

こんな事をしても無意味だって


それでも、



もうひと度、腕を振り上げて力任せに殴る。

拳に嫌というほど残る熱い肉の感触と滴る目の前の男の血、それを振り払うように空をきり自分よりもでかい奴に視線を合わせる。


そいつは力なく床に寝そべっており、その様子がまるで私に興味を示していないみたく感じ、落ち着きを取り戻していた感情がまた溢れそうになった。



『抵抗、しなくて良いのか?』



決して弟たちの前では見せなかった射殺すような視線と低く冷たい声が奴を捕らえる。

なるべく感情を押し殺すがそれをも見透かすかのような余裕を含んだ奴の目が私の神経を逆撫でする。


嗚呼、気に入らない。


そうやって感情を呑み込まんとする表情が気に入らない、いっそのこと殴り返してくれた方がこちらとしても楽だ。



「気が済んだっぺ?」



いつものように笑う奴に、デンマークに無性に腹がたち同時に目頭が熱くなる。


止めろ、止めてくれ、そうやって許そうとするのは。

アイツが消えたのは必然であったと、デンマークのみが原因ではなく様々な要因が重なった結果であったんだと、罵ろよ。



これじゃあ私だけあの日から進めていないみたいじゃないか。



「ザン、」

『黙れ』



やり場のない怒りを他人にぶつける事しか出来ない、なんて滑稽な話でしょうか。






2012/08/09 16:55

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