零式※小説ネタがちょびっと有り
  

本当に狂っている。

全部狂っているよ、この世界は。



「はあ?」

『だから狂ってるよ、この世界の人達は

みんな、みんな狂っているんだ』



眉根を寄せ低めの声を発するサイスに、どこか冷めた視線で一瞥して今一度この感情を言葉にする。

その言葉を受け、目の前の白銀の少女は不機嫌そうに、もしくは不可解そうに此方を睨む。


そりゃあそうだ、自分を狂っていると決め付けられたのだ。

特に気の長くないカテゴリーに入るサイスなら腹に煮えたぎるモノを爆発させるのはそう難しくはないだろう。

それを十年近くともに過ごしたことによって知った上で私はこのような行動をおこしたのだ、彼女らの神経を逆撫でする行為を。



「テメェ、急に何言ってんだコラァ!」



当初はサイスのみを挑発するつもりだったのに、たまたまついでに釣れた魚は大きかったようだ。

呑気にそんな事を考えながら私の目の前に割り込んできた男、ナインを目を細めて見つめる、それは宛ら品定めをする人間のような目付きだったかもしれない。


それを知った故か元々悪かった目付きをさらに鋭くさせるナイン、その表情は極悪党に見えなくもない。

だけどそんな顔で睨まれても私の思いは変わらないよ。



『だってそうじゃんか

大切な家族や恋人に仲間達が死んでもキミ達は平気で忘れる、思い出も約束も誓いも、その人に関連する全てを


その上家族である私達が死んだとしてもマザーに蘇生してもらえるから”戦闘不能“って表現して、例え仮死状態だったとしても誰も悲しまない』

「死んだ人間の記憶を忘れるのはクリスタルによってもたらせる恩恵である事は貴方も知っているでしょう?」

「それに僕達は仲間が死んだからって立ち止まる訳にはいかない、だから」



私の意見に今まで黙っていたクイーンとエースが反論をする。

どちらもさも当たり前のことを言うように(否、彼らにとっては当たり前のことなのだ)何処か淡々と言葉を紡ぐ。


その瞬間、私の感情を押さえるモノは音をたてて弾けた。



『そうゆう所が狂っているんだ!!』



普段声を荒げない私が絶叫にも近い大声を発したせいか、まばらに聞こえていた会話はぱたりと消え静寂が走る。

閑静な0組の教室で私が呼吸をする音しか聞こえなくて、爆発しそうになる何かを必死に押さえつけながら奥歯を噛み締めた。


先程よりも落ち着いたところで再び口を開く、あくまで冷静に。



『大事な人の記憶が失われることが分かっていてもクリスタルの力によるものだから仕方がない

マザーに”なおして“もらえるから仲間が死んでも何とも思わない


そうやって死に対して覚悟も恐怖さえもない、仲間を思い悲しみや怒りを感じないキミ達が、何で!』



喉が熱い、痛い、苦しい。

感情を音にできず空気の漏れる感覚しかしなくて、肝心なときに何もアクションをおこせない自分に憤りを感じる。


脳内に浮かび上がるのは自身の命よりも大切な友、大好きなもう存在しないあいつ等。


ねぇ、何でさ。

何で夢も希望も願いもあった彼らが死んでしまって、願望もなくあの女に敷かれたレールを歩くだけのキミ達が生きてるんだい?


世界の理があの世界と違うのは分かっている、でも。



『何でっ…キミ達なんだ……!』



弱々しく発せられた声は誰にも拾われることなく歪んだこの世界の空気に混ざり込んだ。







設定とか捕捉⇒落乱で天寿を全うしたあとに零式にトリップした主
彼らは三年か五年かな?

死に対する概念の違いにもやもやしてついに爆発した感じ



2012/08/03 17:26

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