『おめでとう、エース』 からからに乾ききった声が溢れ、この空間に音をもたらす。 思ったより乾いた声に内心驚くが、目の前にいる彼は高揚した気分のせいか気付くことはなかったようで、私はバレないように安堵のこもった息を吐いた。 一安心すればマザーみたいな柔らかい笑顔を張り付けて、本当におめでとう、と再び言葉を溢す。 「いや、此方こそ色々協力してくれてありがとう」 『私はたいした事はしていないよ』 土地に恵みをもたらす日の光のような穏やかな微笑みを浮かべ、私の大好きな声で礼を述べる彼は残酷で。 全身を刃物に刺されたような痛みが走り、歪みそうになる表情を抑えながら”兄弟“を演じる私は滑稽に見えるのだろうか。 爪が食い込むほど握り締めた手のひらは見えないように隠しながらそう考える。 『お幸せにね』 私の分まで、という言葉を胃に押し戻し今現在で私ができる最大限の笑顔を造りあげた、ああ明日は筋肉痛だなあ。 深刻なボギャ貧 2012/07/28 08:51 |