落下



この数年間、あの子たち、いやあの子はどんな気持ちで過ごしたのだろうと、今更ぼんやりと考えていた。
壁が激しく揺れる。考えたくもない。彼は、ベルトルトは今どんな気持ちなのだろう。
アニは、ユミルはこの数年間自分達を殺す為の術を学んできたのだ。

そして、私の目の前の彼も。
壁の上は恐ろしくなるほど高い。けれど、ベルトルトの方が数十メートルも高いのだ。

「どうして、」

彼すらも私の問いかけの答えを知らない。けれど、ベルトルトが巨人だった以上私は彼を始末しなければならない。
私は考えるよりも体が先に動く人間だ。

立体機動装置のガスは満タンだ。ユミルを奪還しなければならない。ライナーはエレンがなんとかしてくれるだろう。
でも、あああ、でも、でも、私は。
好きなんだ。彼が。
急所を削ぐため突進してくる私をベルトルトは真っ直ぐ見据えた。容赦しない。譲らない。そういう目をしていた。巨人の表情なんてわかりはしないけど綺麗な瞳が一瞬だけ苦悶に揺れた気がした。

私は、考えるよりも身体が先に動く人間だ。

落下してく刹那、熱いものが肩の上から流れた。自分がいったい何をしたのか自分でも理解できなかった。
ベルトルトの目が大きく開かれた。
人間の急所は巨人の急所を狙うよりもずっと容易に切ることができる。傷つけるためなら死んだ方がずっといい。首の付け根から流れる血液が少し口の中に入って気持ちが悪い。
私は、人間も、彼すらも裏切って引力に身を任せた。




Atgk
続き物書くときにと思って保存してたネタ。続かない、




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