高校生
教師×生徒






蝉の声がうるさくて毎日が憂鬱だ。
夜には蛙が鳴いてなかなか寝付けない。
俺は万年寝不足だった。すこぶる体調も機嫌も目付きもが悪い。

そんなせいか、この学校で人は寄ってこないしかなり怖がられているようだった。
自ら群れるのは嫌いなので自分からコミュニケーションをとることはしないもののそれはたまに退屈で、わいわいやっている奴らがうらやましかったりもする。たまにだが。
そんな中最近、俺をよく気にかけてくれる教師がいた。

「今日はまた一段と顔色が悪いな。本当に大丈夫か?」
「……ンだよ、またおめーかよ」

頬を触ってくる手を払いのけて、そいつの顔を見る。
本当に心配そうな表情をしていて思わずドキッとしてしまった。
俺はこの教師、久遠道也に惚れていた。
心配されるたびに俺の心は調子に乗る。
構ってもらえるなら別に不健康だっていいくらいに。

「朝食は」
「食ってねぇよ」

そう言うと呆れたように睨まれる。
そうして、久遠は何やら上着のポケットから物を出した。

「やっぱり。そんな事だろうとほら、お前の為に買っておいたんだぞ」

差し出されたのはクッキー味の固形栄養食品だった。
別に腹は減ってなかったのだが妙に俺は嬉しくなった。

「……さんきゅ」
「いいか、ちゃんと食うんだぞ。何か悪いところがあれば俺に言え」

そう言って久遠は去っていった。手に残された固形栄養食品をぎゅ、と握り締める。
俺はこうやって、心配されて特別扱いしてもらえるのが堪らない。最近は学校もこの為だけに来てると言っても過言ではなかった。