ねがぽじかっぷる7

帰宅後、俺はメールでごめんねっていう勇気もなかった。
思い返してみると確かに俺は自分を正当化していた。

「……っ」

なぜ軽い気持ちで彼女と付き合ってしまったのだろう。
本心でつながっていないのに「とりあえず」なんて……
どちらかに彼女なんかができてしまえば、この関係は崩れてしまう。
そんなの嫌だ、と思ったはずだったのに先に壊してしまったのは他でもない俺だった。
浜野に嫌われたくない
浜野に好かれていたい

「……はまのっ」

こんなのただの矛盾でしかないし、俺に軽蔑した浜野はもう受け入れてくれないかもしれない。
だけど気づいてしまった
俺は、

「!」

その時、携帯の着信ランプが光った。
電話は浜野からだった。

「……はい」

目に溜まった涙をぬぐい電話に出る。

「速水、いまおまえんち前」
「えっ!?」

心臓が跳ね上がり、俺はその場に固まる。
自分の部屋の窓から下を見ると玄関のところに携帯電話を持った浜野がいた。
俺は、もう何も考えないで階段を駆け下りた。

「はまの……っ!」
「ごめんな、急に」

玄関を開けるとそこには心配そうな顔をした浜野がいた。

「……」

いざ本人を目の前にすると何もしゃべることができなくなった。
ただ、目からはまた新しい涙が零れた。

「速水っ……ごめん俺さっきは言い過ぎた!」

浜野が俺の肩を抱いてくれる。
ちがう、浜野が謝ることなんてないのに。

「ちがっ……」

ぼろぼろと流れ出る涙に邪魔されてうまく話せなかった。
こんな状況なのに俺は浜野がこうやって俺を追いかけてくれたことに安心していた。

「俺、速水が好きでも何でもない女子と付き合うなんて考えただけでも無理だった」
「ごめんなさい、俺」
「でもさ」

浜野の、言い聞かせるような声

「速水が、クラスメイトの女子に取られた気がして。それが一番我慢ならなかった」

浜野は目を細めてそう言った。

「それ、って」
「ごめん……お前の人生なのに俺が主観的になって熱くなちゃって、べつにお前が誰と付き合ったって」

言葉が頭に入ってこない。
さっきのはどういう意味?

「…俺の方が速水とずっと一緒だった、それなのにパッと想いを伝えた女子が付き合えるなんて……ごめん俺何言ってんだろ」

一歩下がって離れようとする浜野。
そんな浜野の手を俺はまた引き寄せた。
あーとかうなりながら焦っている浜野がとても愛おしかった。

「浜野の言ってる意味って……」

俺は互いの顔を近づける。
唇と唇が一瞬重なった。

「こういうことですか?」

かぁっと赤くなる浜野の顔、俺も嬉しさと恥ずかしさにどうにかなりそうだった。