「んーはよ」

ふああと欠伸を一つつきながら俺の手元を覗いてくる。
熱されたフライパンにひかれたサラダ油がぱちぱちと踊っていた。

「あれ、まだ裸なんですか。服を着て下さいよ」
「今日朝ごはんなに〜?」
「シカトですか……パンケーキです」

フライパンに流された生地の表面に細かな気泡が浮かんでくる。
俺はその生地をフライ返しで華麗に裏返した。

「おお、すっげ!」
「これくらいならどんとこいですよ」

どや顔をキめて続いて二枚目
三枚目四枚目五枚目とパンケーキは積みあがっていった。


「うっまそー!いただきます!」「結局上半身裸なんですね……いただきます」

髪を下したままの浜野が笑う。

「速水、バター取って」

ペアのマグカップには熱いコーヒーが入っている。

「俺クリームチーズあんま好きくないかもです」

さっきまで着ていた浜野がくれたエプロン。
ありふれた二人の休日は脳がとろけてしまいそうになるほど甘い。どろどろにかけたシロップも口の中で喜んでいた。