ねがぽじかっぷる6


その後の浜野は明らかにぎこちなかった。
俺も彼女も比較的おとなしい方なので学校で話すことなんてあまりない。なのに浜野はいちいち気を遣ったりして正直言うとやめてほしかった。
浜野が良かれと思ってやっているのは分かっている。
しかしなるべく普段通りにしてくれた方がうれしかったのだ。
俺は思うようになってしまった。

(やっぱこういうポジティブな人とはあまり合わない)

少しでも嫌なことがあったりするとそればかりを考える俺は、浜野みたいに人の恋路を助けようなんてことも思わない。
いい人なんだ、わかっている。

分かってはいるんだ。



「しかしさーなんで話しかけたりしないの?付き合ってるなら堂々とすりゃいーじゃん」

部活後のすっかり暗くなった帰路で浜野がこんなことを呟いた。

「無理ですよ。俺はそんな性格じゃないですし」

あんま話したくない話題が出て、俺は逃れるためどう転換するかばかりを考える。

「ねえ、じゃあさ速水さ」

一呼吸おいて浜野は言う、

「好きでも何でもない子と付き合うの?」

それは、核心を突かれたような感覚だった。

「……なんでって」
「ちゅかさ、それってなんかちがくね?普通さカレカノってずーっと好き合ってつきあうもんなんじゃねーの?」
「べ、べつに、彼女のことが嫌いではありません」

そう言うと、浜野の語気は更に荒くなった。
そして今まで見たことのないほどに怒っていた。

「好きじゃないっしょ?まずは友達からって、それがふつうじゃねーの?」
「普通って……、そんな今時それも珍しいんじゃないんですかね」
「俺ならありえないね、そんなの!」
「……何であなたにそこまで言われなきゃいけないんですか?」
「何でって、俺は……っ」

「もう、いいです」

悔しそうに唇をかみしめている浜野を置いて俺は走った。
もう、頭の中はぐちゃぐちゃだった。
確かに好きじゃない、彼女のことは何も知らない、けど悪い子なんかじゃない。
そこまで言われる筋合いはないと思った。
しかし浜野の言葉は予想以上に心に効いていた。
あんなにはっきり正当なことを言われて、しかもあんなに怒らせてしまった。
すべてにおいて、浜野は間違ってなかったのに。
これから、浜野とどうやって接すればいいんだろう。
考えて考えて、目には涙があふれた。