南沢が俺を好いていると本人の口から告白があったのはつい昨日の事で、返事もろくにできないまま今に至る。
またからかわれているだけなのだろうか真顔で「ずっと好きだった」などと言われてしまえば真かもわからない。
とりあえず混乱してまともに口もきけない俺だった。

(しかし、どうしたものか…)

皆が帰った後の部室で一人じっくり考える。

南沢を恋愛対象にするなんてあり得ない。
奴はだいぶひねくれているが根は真面目で良い奴だし、第一一緒に居て心が安らぐ。
そんな南沢を恋愛対象に見る事はできなかった。

(しかし振ってしまえば、)
(気まずくなって)
(これまでと同じように…)

(しかし恋人同士なんかになってしまったら)
(…だめだ)

やはり、本当の事を伝えよう。

(友達としか思ってない、と)


がちゃ

ふいにドアの開く音がした。
いやな予感がし振り替えると案の定そこには南沢が立っていた。

「三国が部室から出てこないから入った。」

しばらく俺は何も言えないままでいると再び向こうの口が開いた。
「そんなに悩むことか?ただお前も俺が好きで、付き合えるかが分かればいいんだ。」

俺は、顔をしかめながらこう言った

「…俺は、お前が好きだ。」

そして一呼吸置いて続けた。

「だけども、お前好きと俺の好きは違うんだ。だから友達で居てくれないか?」

俺は心の中で言った…!と思った。
南沢の方を見るとみるみる眉が下がり、不機嫌になってゆくのが手に取るように分かる。

「……せる」
「え?」
「好きにさせてみせる…!」

と言い放った南沢は学ランのジャケットを脱ぎ、ワイシャツのボタンに手を掛けた。

「ちょちょちょ、まて南沢!やめろ早まるな」
「うるさい。なんでよ…俺はこんなに三国の事が好きなのに、友達止まりとか、本当」

ぷちぷちとボタンを外す南沢の手を必死に止めようとするが間に合わなく南沢はまもなく半裸になった。
俺は何故かどきまぎしてしまって手に汗をかきながらその身体を見た。
普段は意識してない南沢の身体はしっとりとしていて艶やかだった。
南沢の手が俺の頬に添えられ、低い声で囁かれた。

一度で良いから抱いて?

俺は友達としか思っていない男に、理性がぶっ飛んでしまった。


頭に入る甘い嬌声に何故か俺は小さな頃、公園になる赤い柘榴を食べた記憶を思い出した。
何の実か分からず特に干渉もしていなかった果実をたまたま食べたとき、それはとても甘くて美味だった。