「似合いません」
「いやイイネ!いいよこれ!!」
「ハードル高…」
「おねーさーん!これ下さーい」

くっつけるとハートになるスワロフスキーのペアストラップが二人のケータイで揺れた。
思えば初めてかもしれない、おもいきりデートするなんて。

「釣りは?」
「え、デートに入るんですかあれ」
「んー違うかあ、放課後デートならたくさんあるけどねえ」

恋愛経験の乏しい俺はデートという行為がわからない。
モテる浜野は慣れてるのか緊張もせずに俺をリードしてくれた。
一緒に行った遊園地も楽しかったし、なんだかんだこのストラップもとっても嬉しい。
浜野の家との別れ道にさしかかり、俺は気持ちを伝えた。

「今日は楽しかったです。またこうしてゆっくり遊びましょう。」
これ、大切にしますね。と言いストラップを眺める。暗みがかった空の下でも煌めいてた。

「…うん」
「?」

腑に落ちないような浜野の声。俺はどうしたのだろうと思った。

「…よし。やっぱ速水っもう一ヶ所付き合って!」
「えっ?」

浜野は珍しく切羽詰まった顔で腕を掴んできた。
俺はされるがままにそれについていった。

「浜野?」

連れてかれたのは普通の駅前で、いつもどーり人が流れていくだけだった。
話し掛けても喋らない浜野に段々いらいらしてきた。

「浜野〜なんですかあもう」
「そろそろかな……」
「浜野ぉ」

帰ってしまおうかとも思ったその瞬間、俺の腕を掴んでいた手は俺の手の平を握った。
そして駅前が何千もの明かりに包まれた。
きれいな、イルミネーションだ。

「わあっ……」
「今日イルミ初日なんだぜ。」

きらきらした電飾は動物だったり、雪の結晶だったり様々な形で駅前を彩っていた。

「んで、これよ」

俺たちの目の前にあったのはハートの電飾が飾り付けられたベルだった。

「ここで鐘を鳴らしたカップルは一生幸せになれるってベルなんだ……速水こういうの恥ずかしいかと思ってさ〜不安で……
俺、好きな人とここに来るの夢だったりしたんだ」
「……ふふ」
「笑うなよ〜!なんかハズイ!」「鳴らしましょう、よ」

二人で紐を持ち、ベルを鳴らす。透き通る音が響いた。
握った手には力が加わった。
横を見ると浜野は目を瞑り何かを願っているように見えた。
それを見て、俺も一緒に祈った。

「ちゅか、こんな願い事みたいなのしなくても一生幸せかもな。」「何願ったんですか?」
「……速水さーん、察して」

握った手が恋人つなぎになる。

(この人と、幸せになれますように)




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あっまっ!