ねがぽじかっぷる2

「速水!!おっはよー」
「……おはようございます。」

朝は低血圧なんだ、と言っているはずなのにそれを彼は理解しなかったようだ。雷門に入学してはや一週間が経った。

「浜野おはよー」
「おはー」

予想通り浜野はクラスの人気者の位置になりつつあった。おおらかな人間性は人を引き付けるようだ。

「ちゅーか、今日は何聴いている感じなの速水サン」
「……。」

浜野は人気者のはずなのに、ずっと俺と離れない。俺はやはりまだクラスに完全に溶け込むことはできていないのでおそらくみんなの目には浜野が俺とつるんでいることを不思議に思っている人もいるのではないか。

(話しかけてくるのはあっちなんだよ……)

「あ、チャイム、一限目なんだっけ?」
「数学」
「あーそうか!算数じゃないんだよなぁ、もう」

いそいそと俺の前の席に座って支度をする。
そういえば、朝のHRで担任が言っていた。そろそろ何の部活に入るか決める時期になった。
文化部かなあ……軽音でもあればいいのだけれども。

「へ?部活?」

昼休み、パンにかじりつく浜野に何の部活に入るか聞いてみた。

「……速水は?」
「俺はまだ決まってませんねえ」
「そっか……俺は、サッカー部に入りたいなって思って。実は雷門にはサッカーしに来たんだ。」
「え、そうだったんですか?」

意外だ。まさか身近にも居たんだな、ここにサッカーしに来る生徒。

「んじゃあ、今日下見もかねて部活動でも見学に行きません?」
「えっ、サッカー部に?」
「はい。まあ良かったら俺もやってみたりしようかなあ……」

サッカー部か、まず見に行くだけ。名門だからあまりにも厳しかったらやだしなあ。

そうしてその日の放課後、俺たちはサッカー棟の前に来た。
サッカー棟はやはり大きかった。

「サッカー部って確かこの中でサッカーするんだよね」
「確かここの上に室内グラウンドがあるんですよね。見学はそこでやるそうですよ」

そうして、話して中に入ってみるとそこには俺たちと目的が一緒の一年生も居た。
顧問らしき女の先生に話しかけてみる。

「あら、入部希望の一年生?」
「まあ、ちょっと見学がてら……」
「すごいっすね!さすが雷門!やっぱ俺サッカー部に入りたいや〜」
「浜野うるさ」
「いいわ。ちょうど今新入生の入部テスト期間なの。よかったら受けてみる?」
「マジっすか!?なんなら今すぐにでも受けさせてください!」
「えっ浜野……」

うそだろ、見学に来たつもりなのに一気に入部テストなんて。

「ふふ、あんまり簡単じゃないわようちの入部テストは。あ、私はサッカー部顧問の音無です。よろしくね」