――ベージュ色のカーテンから薄く朝日が差す、休日の朝6時の話。

ふとした拍子に目が覚めてしまった。
きっと二度寝をするには遅い時間なのだろう。しかし隣で寝ている杜若を起こすのにも早い時間だった。

杜若を起こさないようにそっと身体を起こすと、もうすっかり寒くなった外気が刺すように身体を包む。
寒いのが苦手な杜若には辛い季節になった。出ていた肩に布団を掛けなおしてやると、杜若は少し身動ぎしながら私の方に身体を寄せる。


私もまた寒さから動く気になれず、ただ杜若の寝顔を眺めているだけだった。
昔からあまり変わらない寝顔だ。今はもう随分と幼い影を見ることは無くなったが、根源は変わらない。月の光のような金糸の髪を頬に掛けて、白い瞼に空色の宝石を隠している。
起こしてしまうとわかっていても、ついその滑らかな頬に触れたくなってしまう。仄かに薔薇色に染まる頬に軽く口付けると、外気に冷やされて冷たくなった肌の感触が伝わってきた。


「ん……かえで……?」
「ああ、ごめん。起こしてしまったね」


あまりにも触りすぎてしまったのだろうか。または元々杜若は眠りが浅いため、少しの物音も耳に障ってしまったのだろう。
杜若はもう寝るつもりは無い様だったが、外の寒さからか布団の中から出るつもりも無いようだった。更に私に身体を寄せてきて寒さを凌いでいる。


「寒い……」
「もう冬だからな。起きれる?」
「んー、まだ」
「そう。じゃあまだ寝てなさい」
「楓は?」
「私もまだ起きないよ」


頭を撫でてやると、くすぐったそうに微笑み、私の腰に抱きついてきた。私もまたそれが嬉しくて、笑いながらもう一度杜若の頬に口付ける。


「今日は、」
「うん」
「朝ご飯、何がいい?」
「杜若が作るものなら、なんでも」
「朝ご飯食べたら何しよっか」
「杜若と一緒にいたい」
「あはは、そうだね。じゃあずっと家にいようか」


ベージュ色のカーテンから漏れる朝日の色が濃くなってきた。時計は7時を差している。
杜若の髪を弄ったり、頬に触れたりしていると、いつもあっという間に時間がすぎてしまう。あの人には無駄な時間だと笑われるだろうか、しかし話すつもりも無いから別にいい。

私と杜若の時間は二人だけの宝物であり、私たちは二人だけでこの宝物を共有しなければならないのだ。
秘密とは宝物だ。だから私は杜若との時間を、私が知っている杜若全てを秘密にしなければならない。
だってそう、杜若は私にとって、何物にも変えがたい唯一無二なのだから。


そして彼の唇にキスをして思う。
本当に、杜若を何物にも変えてはいけないと。





2011/1112
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