「現代文52点、古典28点、英語18点、数学33点……」
「うっ……」
「日本史40点、科学24点か」
「わっ、悪い!」


第三回テスト、その結果が生徒の手元に返される日。
二年生、神崎茜の結果は悲惨たるものだった。
ヘンリー学園は中高一貫校の『お嬢様』学校。箱入り娘が多く入学するこの学校は、とにかく真面目な生徒が多い。テスト期間は皆自習室や図書館で慎ましく勉強しているのだ。

勿論、彼だって勉強していない訳ではない。テスト期間はクラスメイトの秀才や、目の前にいる努力家なルームメイトに勉強を教えてもらっていたのだから。
しかし、一朝一夕で身につくものには限界がある。結果は目の前のルームメイトが言うとおり、散々なものだった。


「……いや、私の教え方が悪かったから」


ルームメイトの彼は、申し訳なさそうな顔をして俯いてしまった。
彼の努力は、神崎が一番よく知っている。自分に勉強を教えるために、夜遅くまで自習していたし、彼自身の勉強だって欠かしたことはなかった。
そんな彼の努力を知っているからこそ、神崎も応えたかった。


「悪かったよ、あんなに教えてもらったのに」
「茜……」


神崎は、楓の落ち込んだ顔に滅法弱かった。普段は無愛想な彼だが、本当は優しくて世話焼きな少年なのだ。


「それに」
「ん?」
「おっ、お前の! 教え方は……上手かったよ。あああ、ありがとうな!!」


そう伝えると、神崎は楓から顔を反らして耳まで赤く染めている。


「……ぷっ」
「笑うなよ!!」
「ごめんごめん……ふふ」


楓は口を手で隠しながら、鈴を転がすように笑っていた。そして神崎の耳元へ顔を近付けて一言、


「追試終わったら、どこか遊びに行こうか」


と囁いて頬に唇を寄せた。
神崎は更に顔を熱くして楓の顔を見つめた。


「頑張ろうね、茜」


2012/1019
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