――絶句した。

部屋の中では、楓が、父親に押し倒されて、所謂、強姦をされそうになっていた。
白い手首を床に縫い付けられ、ワイシャツは無理矢理暴かれ胸元が露になっている。スラックスは降ろされ、下着はナイフで切り裂かれていた。

俺が手に入れられない楓を全て、父親が所有しているかのようだ。
頭が沸騰する。俺が望んだ楓の全てが、全部全部全部全部……ッ!!!


それから先のことは、よく覚えていない。
楓の柔らかな髪を掴んで、俺の部屋まで引き摺って行ったことはなんとなく覚えている。拳が痛かったから、父親を殴ったのかもしれない。誰かとすれ違ったかなんて覚えている訳がなかった。


ただ一つ明確に覚えていることは、俺は楓を犯した。

泣き叫ぶ楓を殴って、ろくに慣らさずに結合部から血が出ているのもお構い無しで、ただただ楓に欲をぶつけ続けた。

最低だという自覚はある。楓は何も悪く無かった。いや、いつだって楓が悪かったことなんて無かったのに。
ただの子どもの我が儘だ。大好きな玩具を取り上げられて泣き喚いている子どもと同じだった。父親に楓を取られるのが嫌だっただけ。
そうして、何時間も楓を強姦し続けた。

俺は楓の全てを、無理矢理手に入れた。手に入れなければ、誰かに取られてしまいそうで不安だったのだ。
楓は俺を許してくれた。その優しさに付け込んで、俺は何日も何日も楓に暴力を振るい続けた。声も涙も枯れてしまった楓を、何日も犯し続けて、悦に入っていたのだ。

――あの日から、俺はおかしくなってしまったのだと思う。
少しでも気に入らないことがあれば、楓を折檻して鎖で縛り付けた。楓が逃げないように首輪を付けて、何回も殺しそうになるぐらい暴力を振るった。
楓にしてみれば、終わりの無い拷問だろう。それでも楓は、俺の傍にいたいと言ってくれた。



「……っ」
「楓、おはよう」

楓が目を覚ます時、俺は必ず楓にキスをする。いつも血の味がするけど、楓の血は不思議と蜜のように甘かったので、嫌な味ではなかった。
キスをすると、楓はいつも優しく微笑んでくれる。その微笑みがあまりにも暖かくて、俺はいつも泣いてしまう。そんな俺を、楓は優しく慰めてくれる。頬を撫で、細い指で涙を拭ってくれる。


「楓、ごめんね。ごめんね、痛かったよね。ごめん、ごめんね」
「……ぃ、い……よ? かき……つばた……っ、泣か……ない、で」


その優しさに付け込んで、また楓を傷つける。
俺はいつ、楓を殺してしまうんだろう。昔に比べて楓の傷は深く付くようになってしまったし、楓もあまり笑わなくなってしまった。
止めようと思っても、独占欲が暴走して更に楓を傷つけてしまう。楓に嫌われるのが怖くて、俺に縛り付けようと暴力で楓を支配した。


「ね、ぇ……かき、つばた」
「ん? なぁに?」
「……ごめん、ね」



(救済の女神は、まだ現れない。)



2012/0528
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