(楓と茜)

まだ昼間なのに、外は夜のように暗い。雨が入らないように窓を閉めて、雷の音に耳を傾けていた。
昔は雷の音を一人で怯えながらやり過ごしていた。今よりずっと怖がりだった私に、雷はまるで車の衝突音のように酷く恐ろしいものであったのだろう。
今は雷の音を一人で聞くこともなくなった。怖くないか、と聞かれたら今だに恐ろしいものではある。しかし大人になった今、必要以上に怖れを表に出すことも無い。


「……楓、お前怖くねぇの?」
「怖いよ。どうして?」
「いや、なんつーか。落ち着いてるし」
「そうかな」


茜が落ち着かない様子でそわそわしている。彼は窓に視線を向けることは無い。


「茜は怖い?」
「こここ怖いわけねぇだろボケ!!」
「そっか」


ベッドの上に座っている茜の足の間に座る。背中を茜に寄りかける。いつもよりも少し早い茜の鼓動が、私に振動となって伝わってきた。茜は私の身体を抱き抱えながら、首筋に頭を埋めている。


「雨は嫌いだよ」
「……ああ」
「雷も怖い」
「……」
「でもね。茜と一緒なら、雨でも雷でもいいかなって思えるようになった」
「……雷は勘弁だ」
「ふふ、そっか」


雨は止まない。雷も鳴っている。茜はまだ怖いのか、いつもより少し強い力で私を抱き締めてくる。
私も少し怖かった。でも、もう怖いからと泣かなくてもいいのだろう。



(君がいるから)



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