「あ、結局どうだった?」
「ん?なにが?」
「この前の話。爆豪とまだ続いてたん?」
「あーーー…、うん。聞いてはないんだけどね、」



わいわいと賑わう学食。
耳郎ちゃんがふと思い出したかのように尋ねるもんだから、一体なんのことか分からなかった。
きっとそこまで興味はなかったのだろう。そっか、と言う耳郎ちゃんはもう目の前にあるカレーを頬張っている。私も再びカレーうどんを口の中に入れる。美味しい。





あ、
と再び耳郎ちゃんがなにか気づいたように私を見るものだから、食事する手を止めて首を傾げる。でもその視線は私、ではなく頭上のほうに向けられている。
なにかあるのだろうかと振り返ると、いつものように眉間に皺を寄せてる爆豪くんがいた。





「わ、どうしたの?」
「……おい口の周りきたねぇぞ。なに食ってんだ。」
「え、まじ?」




耳郎ちゃんに顔を向けると呆れたように笑いながらティッシュをくれた。恥ずかしい恥ずかしい。慌てて口を拭くとたしかにかなり付いていた様子。

へへ、と少々の恥じらいを隠しながら笑う。するとまだ多分付いていたのだろう、後ろからぬるっと出てきた手に私の手は掴まれ、そのまままたティッシュで口の周りを拭われる。その手の主は私の顔を覗き込むかのようにしてじいと口元を凝視していて。
羞恥心を噛み締めるかのように、唇をぎゅっと閉じる。拭かれている口周りが、妙に優しくて痒い。





「なになに、急にイチャコラしないでよアンタ等。」
「おいこらクソ耳。茶化してんのか?」
「ば、爆豪くん自分で拭けるからさ。」




本当にそれ。
急に距離感近くなりすぎて妙に汗が滲んできた。




「で爆豪はなにしに来たの。名前になにかあるの?」
「そ、そうそう。どうしたの?」



爆豪くんは手を止めて覗き込んでいた顔を上げ、耳郎ちゃんをじいと見つめる。あ、この角度初めて見るかも。こうやって見るとちゃーんと綺麗な顔立ちなんだよなぁ。なんて。




「あ、もしかしてうちがいたら話せない感じ?」
「察しがいいじゃねぇか。」
「え耳郎ちゃん、」
「もう食べおわったから別にいいよ。じゃあとでね。」



そう言って席を立つ耳郎ちゃんは爆豪くんに向かってべーっと舌を出すと、そそくさと食堂を後にする。
すると爆豪くんは目の前の耳郎ちゃんがいた席にドカッと音を立て座った。




「ねぇ耳郎ちゃんがいたらできない話ってどんだけ大事な話なわけ。」
「ぁあ?」
「もっと言い方あるでしょって話だよ。」
「るせぇな。」
「…ほんと口が悪いなぁ。」



そんなんだからここの皺がずっと寄ってるんだよ、と自分の眉間をとんとんと指差しながら言うけれど、その鋭い目にギロリと睨まれてしまったらそれまでだった。

その視線から避けるように若干冷めてしまったうどんを口に入れる。あ、全然いける。
私が食べている間、爆豪くんは特になにか言うわけでもなくただ携帯を触っていた。なんなんだろう。










「ふぅご馳走様でした。」
「クソおせぇ。どんだけちまちま食ってんだよ。」
「はいはいお待たせしました。それで、なにか話あるの?」
「………。」




爆豪くんはまたなにかを考えるようにじいと私を見る。ねぇ、そのルビーで見られると、なんか、金縛りにあったみたいに動けなくなるんだよね。
少しの沈黙、私も彼をじいと見つめる。






「………今日は何曜日だ。」
「今日はえっとね、木曜日。」
「じゃあ明々後日は。」
「え、なに私そんなに馬鹿じゃないよ。日曜でしょ。」



それかなにか心理テストてきなやつだろうか。
え、こんな真面目な顔をしていきなり?ああでもお互いに知らないことばかりだからなぁ。そういう手段もあるのかも。





「………明々後日空けとけ。」
「へ、」
「忘れたら殺す。」



その強い眼差しは私に有無を言わせない。
わかったとそれだけ言葉に出すと、満足したのだろう、席を立ちさっさと去っていった。
なにがあるの、どこかに行くの、なにかするの、聞きたいことは山ほどあったけど。
とりあえず私と爆豪くんは一応ではあるけどお付き合いしているわけであって。
そんなふたりが日曜なにをするかって、そんなの、デートじゃないか。デートに決まってる。え、デート、





「…………耳郎ちゃんに相談しよ。」






耳郎ちゃんがいなくてよかったかもしれない。
きっと今、私変な顔してる。









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