窓から外を覗いてみると雪が降っているのが窺えた。しとしとしている水分を多く含んだ雪じゃなくて、塵のようなふわふわとした雪だ。積もるんだろうなあ、などと漠然と考えながら視線を再度前へと移す。今日は今年最後の委員会の日だ。

私は今年B組で保健委員を努めさせてもらっていたのだが、今まで一度足りともA組の保健委員を目にした事がない。本当なら私の前の席に座っている筈なのだけど、今まであった委員会を全てサボっていたらしく担当の先生が「また仁王はサボりか――」等とぼやいている。すると、教室の扉が勢いよく開いてそこから奇抜な髪色をした男の子が飛び出してきた。

彼が、サボり魔のにおうくん。確か面識はあった気がする。話した事はないけれど幸村くんと一緒にいる時に何度か会っている筈だ。仁王くんは私の前の席に腰を落ち着かせて、鞄を机の上に置いた。そして長らくサボっていたせいか担当の先生にこっぴどく叱られていたようだがその言葉を右から左に流しているようにも見える。

肝が座ってる人だなあ、と感心していると先生の方に背中を向けるようにして私の机に肘をついた。頼むから話を聞いてくれ、と悲願するかのような先生の声が教室に響いている。

「お前さん幸村の彼女の」
「幼馴染みの苗字です」
「ほー、そうやったんか。まあそんな事はどうでもいいから今から何するのか教えてくれんかの」

自分から振っておいて――。
肝が座っているだけではなく随分とマイペースな人らしい。マイペースと言えば幸村くんも負けず劣らずマイペースだと思うけど。とりあえず、今年の活動で何か反省点があればそのプリントに書くんだけど――。そこまで説明してから彼が今まで委員会活動をサボっていた事を思い出した。

「仁王くんはサボってたから反省点も何もない、よね?あはは……」
「サボった事を反省点にすればよか」

そう言いながら私のプリントに「サボってしまったのでこれからはサボらないようにします」と書く仁王くん。そのプリントとシャーペン私のなんだけどな……。言う暇すら与えて貰えず、私は渋々先生の元まで行って新しいプリントを貰う事になった。

そのプリントを提出した後で、未だに後ろ――私の方を向いたまま携帯をいじる仁王くんに話しかけてみる事にした。

「こんなにサボってるのにどうして保健委員になったの?」
「委員会決める時に寝とったら勝手に決められてたんじゃ。部活だけでも大変なのに委員会もやるなんて面倒やきずっとサボっとったけど」

マイペースなところは幸村くんと似ているけど、正反対な人なんだと知った。幸村くんはどんな仕事だってこなしてみせるし、何より面倒臭いなんて言葉は絶対に使わない人だから。この時、幸村くんと正反対の仁王くんに惹かれたのも事実なのかもしれない。それでも最後の最後まで、仁王くんが好きだという感情はないと心の中で叫んでいたのだけれども。

相変わらず外には雪が降っている。積もりつつあるそれを眺めながら、委員会活動という名の憂鬱な時間を仁王くんと共に過ごしていった。


2005-February
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