――私達は高校生になった。

去年、幸村くんが部活中に倒れてそのまま入院していたという出来事があった。何とか全国大会前には復活して普段通りの彼らしいテニスをしていたのだが、幸村くんが倒れたと聞いた時は私も気が気じゃなかった。お見舞いに行った時に幸村くんが何度も「大丈夫」と私に言ってくれて、それでやっと幸村くんの病気は治るんだと思えるようになったのだが、私はあの時の胸のざわめきを忘れない。

「今年は同じクラスみたいだね」
「問題が解けないからって俺の席にくるのはやめてくれよ」
「もう子供じゃないんだから」

幸村くんと最後に同じクラスになったのは小学校の時だった。あの頃の私は幸村くんの言う通りわからない問題があればすぐに幸村くんの席まで行って答えを催促していたような気がする。因みに、その時に何度も先生に注意をされた事だって覚えている。

幸村くんと教室に向かっている途中、あからさまに幸村くんを凝視している女の子の姿が目に入った。――中学三年生の時に私と同じクラスだった高崎さんだ。彼女は他の幸村くんを好きな女の子と違ってミーハーじゃない。凄く真面目で優しくて、クラスでも評判の良い学級委員だった。

そんな彼女からの熱い視線に幸村くんも気付いていたのだろうか。ふとそちらに目をやった幸村くんは、高崎さんに向かってにこりとあたりの良い笑顔を振り撒いていた。そんな彼等を見てお似合いだと思ってしまう自分と、それを認めたくない自分が葛藤している事に気付いた。私ってどうしてこんなに醜いんだろう。

「幸村くんモテモテだね」
「お前とは顔の作りが違うからね」
「言い返せない事が悔しい」

それから少し経って、高崎さんと幸村くんが一緒にいるところを良く見掛けるようになった。同じ学級委員なのだから一緒にいるのは当たり前なのかも知れないが、私の心には不安が生じている。私は妙に焦っていた。

幸村くんが私に向けている笑顔とあの子に向けている笑顔が別であると気付いたのはその時だったと思う。幸村くんは私の事を女として見てくれなかったんだ。一番近い位置にいる筈なのに、幼馴染みというポジションは恋人という位置にはあまりにも遠すぎた。


2004-April
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