「風の噂で聞いたよ!元チャンプ、四天王に挑戦するんだって!?」
「…ヒガナ!」
さすらいの旅から一時帰還だよ、なんて言う彼女も相変わらず自由で。どうも新たな場所で新たな収穫があったらしくて、簡潔に教えてくれたっけ。
「うん、これから行く予定」
…そう。どうしてダイゴさんがそんな決断をしたのかわからないけど、帰るなり私に、
「かなこちゃん、ボクはこれから、ミクリと真剣勝負をしに行こうと思っているんだ」
なんて言ってきた。勝負ならあれから何度かしてるし、今更って気もするけど、彼の中にまだ何か、あの時の、そう…、イッシュ地方での出来事がまだ、くすぶってる気がして、止めることができなかった。
「次の挑戦者は誰だい?」
いつもより念入りに髪をセットした…と思われるダイゴさんの戦いっぷりを後ろから見て。ロゼは私にすり寄りながらどこか不思議な空気感を出していた。それが何のことかわかるのに、そんなに時間は要さなかった。
「…ボクだよ、ミクリ」
憂いを帯びた声色で問いかけた彼__ミクリさんに対してうやうやしく答えると、わかっていたかのようにニコリと微笑む。直後に真剣な眼差しで見つめ合う二人もやっぱり素敵で…、本当、絵になる。
「…フフッ、ダイゴ。彼女をここに連れてきたという事は、答えが出たんだろう」
「……。それはこれから、決着をつけるよ。準備はいいかい?」
一瞬の間があった。でも、何事もなかったかのようにスッとメガラベルピンに手を当てると、可憐な動きでモンスターボールを手にする。伝わってくる強さがシンクロしたかのようにロゼが、鳴き声を発した。
「チャンピオンたるもの…、いつでも準備はできているさ。では、始めようか」
ダイゴさんがコクンと頷けば、シンと辺りが静まり返る。チラッと後ろを見れば、気になるのかもしれない…四天王のみんなが顔を揃えていた。