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「ありがとうございます、シロナさん!」
「いいえ、元はと言えば、あたしが誤解させるような真似をしたのが悪いの、だから、気にしないで?初めにも言ったけど…ダイゴには、あなたのような女性がぴったりだと思うの!だから、彼の弱い部分も含めて、愛して欲しいな」
「……っ、はい……」

きっと、たぶんこれは勘だけど、シロナさん…、私の分もって、言いたかったんだろうなって。ツツジさんもそうだけど、シロナさんも絶対に…、ダイゴさんが好きなんだと思うから…。けど、そんなダイゴさんは私を選んでくれた、だから…、みんなの分まで、ダイゴさんと幸せにならなくちゃ…!


「ありがとう、ダイゴさん」
「ん?どうかしたのかい?かなこちゃん」

ぼんやりと海を眺めて。会えた人にだけお礼とお別れを言ってここ、イッシュ地方を後にする私たち。軽く目を閉じて思い出す、昨日の夜の事。

「……」

辺りは漆黒の闇に包まれている。隣からの温もりにすうっと寄り添い、そっとその頬を手で包む。出逢った頃から変わらない…、綺麗な瞳。それは彼__ダイゴさんが純粋な、汚れのない人だって事を証明してるみたい。吸い込まれるように顔を近づけると、唇が触れるか触れないかの距離で見つめ合う。

「…ん?どうしたの?かなこちゃん」
「あの……」

まっすぐな視線に、恥ずかしくて手を離した…するとその手をうやうやしく握って、ニッコリ微笑む。

「うん……こういう時間も、悪くないね」
「そうだね……」

穏やかな空気。優しい力で私を抱き寄せると、そっと消え入るように囁くんだ。

「ごめんね、かなこちゃん」
「ふふ…どうして謝るの?」
「そして…ありがとう」

言葉なんていらない。互いの気持ちを代弁するかのように重なる唇。本当に色んな事があったけど…、やっぱりこの腕を振り払わなくて良かった、そう思う。

「また、カロスへ行こう…?」
「うん……」

何気なく言われたこの一言だけど、ダイゴさんはちゃんと…、この先の事も考えていてくれた。その話はまた、後ほど。穏やかな航海を終えて私たちは、あるべき場所へと戻っていった…。


bkm
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