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「ん…?」

振り返る笑顔でさえも素敵。いくら他の男の人と話してたって、こんなに穏やかな気持ちになれる事ないもん…だから私は、この人から離れられないし、離れたくないの。

「私は…」

好き、その言葉を胸に残して寄り添うと、優しく髪をすいてくれる。その手の温もりも…、出会った時から、ずっとずっと……。

「明日は…映画でも観に行こうか」
「映画…?」

…幸せ。本当にそう思う。これから先、どんな困難が待ち受けたってもう…、絶対に絶対に迷わない。お互いの心の中でそう誓い合って私たちは、PWTを後にした。

「すごい……っ!」

大人の街、その呼び方がふさわしいタチワキシティ。街を歩くカップルは少しだけ、年齢層が高い気もする…。それに見劣りしないダイゴさんはやっぱり御曹司で、いいとこ育ちなんだと思う。

「そんなに緊張しなくて平気だと思うけどな?」
「え…?」

いつの間にか強く手を握り返してたみたい…ダイゴさんに笑われちゃう。でも、そんな雰囲気もつき合いたてのカップルみたいでちょっとだけ…、気持ちがほっこりする。

「初めての映画デートだから、少しスマートにエスコートしてみようか」
「え?いいよそんなの、いつも通りで」

そんな会話をしながらも、ダイゴさんはチケットの手配から何から手慣れてる。大きなスクリーンで観る映画は一際素敵で…、ロマンチックな時間を過ごせた気がした。

「あの女優さん、きっと若いね」
「うん、そうだね。なかなかセンスがありそうだ」
「ダイゴさん、惚れちゃダメだからね!」
「かなこちゃんこそ!ハチクさんに心奪われたりしないでくれよ?」

ああ…、ヤバい!久しぶりにこんなにこんなに、大好きなダイゴさんを感じて。初めてじゃないのに本当にあの時に戻ったかのようにはしゃいで、笑って。キスなんかしなくても私たち、幸せになれるんだなって思ったの。その瞬間…、今まで感じていたモヤモヤが、いっきに晴れた、そんな気がしたの。


bkm
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