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「ん……」

眩しい日差しで目が覚めた。私、昨日……。あんな風に求められたの、初めてだったから…。乱暴に愛されたワケでもない、なのにどうして…こんなに切なくて、苦しいんだろう…。

「かなこちゃん……?」

程なくして起きてきたダイゴさんは、熱は下がったみたい、晴れやかな笑顔を浮かべていた。そして何事もなかったかのようにPWTに戻ろう?そう言ってくる。

「そう、だね……」
「どうしたの…?まさか、泣いているの…?」

いつの間にか泣いてたみたい…涙を拭う指の温もりは何も変わらなくて…、ちょっとだけホッとした。

「ボクが無理やり…きみを求めたから…?」
「…っ、違う、そうじゃない…」
「なら、どうして……?」

……っ。そう言うダイゴさんはひどく辛そうで…、そっとその胸に身体を預けた。あやすように優しく背中をポンと叩かれ、緊張が解かれたように溢れ出る涙。

「嫌だったなら…謝るよ。わかっているよ、でもねかなこちゃん…ボクは心が弱っているとなぜか、きみと繋がっていたいと強く思ってしまうんだ…」
「ダイゴさん……」
「嫌な時は、突き飛ばしてくれて構わないから…」

そんなの…、痛いくらいにわかってる。ダイゴさんは、力づくでそういう事をする人じゃない…だから、突き飛ばす事なんてできない。それに…。

「私たち、結婚するんだよね…?」
「うん…。本当はこんな事、言いたくはないけどボクは…、きみが他の男に盗られてしまうんじゃないかって、ずっと不安だったんだ…」
「ダイゴさん……」
「大人にならなくちゃ…そう思って、嫉妬だとか醜い感情を抑えていたけど、夫婦になるから…、自分の気持ちを隠しちゃいけないって、そう…、思ったんだ…」

きみにだけは、きちんと知っていてほしい。そう力なく言うダイゴさんは本当は…、私が思っているよりもずっとずっと…、弱いのかもしれない。私の知らないところで傷ついて、苦しんで…それを一人で抱えこんでしまう人なのかもしれない…だから。


bkm
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