「わぁ…!素敵…!」
ヒウンシティから船に乗って。私たちは今、リバティガーデン島というところに来てる。あんな事があったから、気を遣ってくれたのかな…?そう思ったりもしたけどあれから、一言も言葉を交わしていない。イッシュに来た頃は、本当に幸せだったのにな…そう思うとちょっとだけ、切なくなった。
「少し…向こうの方を見てくるね」
そう声をかけたけど、聞こえてないのかな…何も反応はない。それが妙に悲しくてそっと距離を取ったけど、彼が追いかけてくる事はなかった。
「ここから見る景色、すごく綺麗ですよね」
「…え?あ、そうですね!」
ボーッと眺めていたら、エリートトレーナーに話しかけられた。その瞳はぼんやりと私…いや、後ろから来る彼を見つめていた。
「行くよ、かなこちゃん」
少し強めに腕を引かれる。それならさっき、引き止めてくれたらよかったじゃない…そんな気持ちが私の中で駆けめぐる。
「……」
「……」
沈黙が続く。こんなはずじゃなかったのに…。気づけば涙が頬を伝っていて、それに気づいたダイゴさんは、ふぅと溜息をついた。
「かなこちゃん…これじゃ、楽しくなんてないよね。帰ろうか、PWTに」
「……」
ムカついたから黙ってたら、何を勘違いしたんだろう…こんな事を言ってくる。
「…あの事、シロナとの事なら、何もなかったって言ったよね?それとも、ボクの言う事が信じられないの…?」
「…ち、違う!そうじゃない…!」
じゃあ何…?彼の目はそう言ってる。あれだけ言わなくてもわかる行動をしておいて…、こういう時だけは鈍感なんだよね。