「……」
あれから、ボクがチャンピオンを引退してからずっと、考えていたんだ。絶対的自信とポケモンへの信頼と愛情…それらは他の誰にも引けをとらないと自分では思っている。そんなボクがどうして、答えの見つからない迷路をさまよっている気持ちになるんだろうか…。
「…さん、ダイゴさん!!」
「…っ、すまない、かなこちゃん…」
そうか今は…、飛行機の中だ。チャンピオンの後任をミクリにお願いして、少し会社の会議だったりをしたけれど…、やはり何かが足りない。もしかすればどこか、別の場所に行けば何か…、新たな糸口というかが見つかるかもしれない…そう、思ったんだ…。
…もう、何考えてるのかな?ダイゴさん。自分から誘ったくせに飛行機に乗ってから一言もしゃべってない。やっぱり…、チャンピオンを辞めた事、後悔してるのかも。それに、ミクリさんとの勝負だって、本当はとっくに決着がついてて、きっとわざと負けたんじゃないかな…何となくそう思った。
“御曹司ってのも…色々と大変なんだな”
前に、カロスで話を聞いた時にそう思ったけど…、結局こうやって自由に他の地方に出向いてるんだもん、何だかんだでダイゴさん、やりたい事やってるよね…。だけどその1つだったチャンピオン業を退くのは、まだ早かったんじゃないかな。
「…かなこちゃん…?」
「私の中では、ダイゴさんがずっと、チャンピオンだからね?」
フフ…気を遣ってくれているのかい?きみは。チャンピオンを退いた事が、何らかの理由で関係しているとは思うよでも、かなこちゃん…きみに出会えてボクは、たくさんの『初めて』を知ることができたから。旅をする事もそう、確かに石探しはボクにとってなくてはならないもの。つき合いたての頃は、それがダントツで一番だっただろうね。けど、二人で何かをする事…それだけでも、幸せなんだと気づいたんだ。
「かなこちゃん…愛してる」
目を丸くした彼女の頬にそっと口づけると、いつぶりだろう…?ボクたちはイッシュ地方に、足を踏み入れたんだ。