「どうしたんだい?かなこちゃん」
いつも通りにリーグでの仕事を終えて家に帰ると、かなこちゃんはなぜかベッドの端にいて、ミズゴロウドールを抱きしめていた。話しかけるとただ、まっすぐにボクの方を見ている。慌てて上着を脱ぎ捨てると…きみは、一体どうしたと言うんだ…?
「かなこちゃん…誘っているの?」
「…」
そう問うと、少し上目遣いでボクを見つめてくる。可愛い…それはもちろんだけど。彼女の手からミズゴロウドールを奪い取ると、ボクの好きな純白…じゃなくて真っ赤な下着を身につけたかなこちゃん…。もしかして、あまり構ってやれなかったから、拗ねているのかい?
「かなこちゃん…着替えてくるよ、待ってて?」
風呂場へ行こうとすると腕を掴まれる。よっぽど構ってほしいようだ…仕方ないな。抱きあげてベッドに降ろすと今度は…、恥ずかしそうな顔を向ける。
「ふふ…そんな顔しても、逃がしてあげないよ?かなこちゃん」
いつもよりじっくり時間をかけて堪能したからなのか…、珍しく何も着ないまま眠ってしまっている彼女。初めの頃はそういえば、そうだったかもしれない。隣を見れば思い出してしまう葛藤と戦うのが辛かったのも、懐かしく感じる。
「ダイゴさん……?」
寝ぼけているのだろうか…潤んだ瞳でボクを見つめている…。そっと髪を撫でてやると、満足げに口元を緩める。
「ふふ…そのまま寝てしまったようだね?」
「やだ…見てたの…」
恥じらいを忘れない彼女はひどく、大人びて見えた。自分に余裕がなくて、かなこちゃんとの時間を後回しにしていたから、待っていたのかな?もしかすると。
「きみから誘ってくれても構わないよ、かなこ」
耳元でそう囁くと、くすぐったいのだろうか…身をよじるかなこちゃん。
「愛してる…」
__幸せ。その一言で片づけてしまえたら、どんなに楽だろう…。そう思いながら、隣からの体温にそっと目を閉じた。