「かなこちゃん…ボクと……」
…。あれから何回も練習しているんだけれど、いざ声に出すと、緊張してしまうな…。ボクらしくない?そうかな?ボクはいつだって余裕たっぷりなワケじゃあないから…ね?そんな事をしているうちに待ち合わせの時間が迫ってきていたから、エアームドに頼んで、夕方のミナモシティへ急ぐ。
「…待たせたね、かなこちゃん」
夕陽に照らされた彼女の横顔は…、驚くほどに綺麗だった。出会った時よりも大人びたその顔は、これからどんな風に変わっていくんだろう…ワクワクする気持ちと、引き止めたい気持ちで、揺れている。
「ダイゴさん…綺麗ですね、夕陽が」
この時間には初めて来たから…と嬉しそうなかなこちゃんを見てボクは、決心した。うん…元々決めていたけれどここで、伝えようと改めて思った。
「かなこちゃん、ボクと…結婚してください!」
せっかくすんなり言えたのに、なぜかかなこちゃんはキョトンとしている。まさか…、早すぎた…?それとも何、ボクが一人で、盛り上がりすぎた……?
「…っ、はい…!」
「…おっと!」
ぎゅっとボクの身体に腕を回してくるかなこちゃんは、少し泣いているようだ。落ち着いた頃を見計らって、調達してきたものを出す。
「かなこちゃん…つけてみて?」
「これ……!」
そう…、驚いた…?あれはボクたちがまだカロスで旅をしている時に寄ったブティックでの事だけれど…
「これ…素敵な指輪…」
服を選ぶ前に、少しだけショーケースに並ぶアクセサリーを、見ていたよねきみは?ボクは気づいていないフリをしたけど、もしもこの想いが通じたなら…プレゼントしよう、そう決めていたんだ。
「ありがとう…!ダイゴさん…!」
素敵な笑顔を向けてくれるかなこちゃんと、何度目かわからない口づけを交わしてボクたちは、家に帰った。
「…そうだかなこちゃん!1つ、提案があるんだ!」
帰るなりそう言うと、不思議そうにボクを見つめてくる…。
「これから…敬語はやめないかい?ボクたち、対等な関係になるワケだから…」
「…うん……」
そんな反応されたら、何だかこっちまで緊張するな…焦る必要なんてないんだけどね。籍を入れるまでは正式な発表は避ける事をおやじと約束した。だからなのかもしれない…少しでも、ボクだけのかなこちゃんだって事を、周りにわからせておかなくちゃ…そう思ったんだ。