「ただいまー!」
着くなりママは何かを察したみたい、サッとリビングを綺麗にしてどうぞ、とダイゴさんを促す。そわそわしている私とは反対に、冷静な気もするダイゴさん…。普通、緊張しない?こういうのって。
「かなこちゃん…大丈夫」
何が大丈夫なんだろう…しばらくしてパパが帰ってきて、本題を切り出す。
「…パパ、あ、あのね…!」
「センリさん…。もしかすると父から聞いているかもしれませんが、ボクたち…結婚したいと考えています」
………。黙ったまんまのパパに対して、紳士な笑みを崩さないダイゴさん。その横顔からは、緊張なんて微塵も感じられない。この人、本当にできた人なのね…。
「…ダイゴくん」
「…はい」
「娘を…、よろしく頼んだよ」
……!パパ…!浮かべた表情は寂しそうだったけど、かなこが選んだんだもんな、って優しい。
「二人とも…、末永くお幸せに、ね!」
パンパンと手を叩いて、堅苦しい雰囲気はこれで終わり!と言わんばかりのママ。後で聞いたんだけど、このくだりは何回も練習したみたいで、今日のために豪華な夕食が用意されていた。
「ダイゴくん…こんな娘でいいのか?本当に」
「はは…センリさん。ボクはかなこさん以上に、素敵な女性に出会った事はありませんよ」
遠目から見るダイゴさんは、育ちのよさが表れていて…本当に素敵。私なんかが並んでいていいのかなってこういう場面では常に思うけど、本当は庶民派なんじゃないかしら…ママの言うことも、一理あるのかもしれない。
「かなこは…本当にいい子だよ。よそに出すのがもったいないくらいにね…。でもきみならきっと、かなこを幸せにしてくれる…そんな気がしているよ」
その言葉が、妙にくすぐったくて今日は、実家に泊まらせてもらう事にした。