「…っ!?ダイゴさん!ダイゴさん…!」
「大丈夫だよかなこちゃん」
ダイゴさんは今朝。少し風邪っぽいな…とか言いながら、昨日約束したシロガネ山に登ろうと言い出している。探検家気取りの服装になると、行くよ、そう手招きしてくる。
「…無理、してませんか?私のために…」
そう言うとこのくらい大したことないよ、っていつもの笑顔で。ずるいよね…この笑顔を向けられたら、私は絶対に言い返せない。
「道が険しいから、気をつけてね?かなこちゃん」
私は、ゴウカザルにロッククライムを教えている。ダイゴさんはというと。ある程度は手助けしているけど、自分で登りたくてね…と頑な。何とか外に通じる穴に到達して、外周をぐるぐる回ってみる。
「まずいな…少し吹雪いてきたね」
「はい…。中に、戻りましょうか」
ここは高いところにあるからか、年中こんな感じに吹雪いてたりするみたい。いつかの現象を思い出して私は、何となく不安になった。そしてその予感は…、的中してしまう…。
「…ダイゴさん!?」
突然。ダイゴさんの姿が見えなくなったと思ったら。ゴロゴロと大きな音を立てて何かが…、崩れてるみたい……?
「…危ない!!」
「…っ!」
ドンッと背中に硬いものが当たる。石に…、ぶつかった……?その瞬間__ゴオオォォ…という、けたたましい音がして、辺り一面が真っ白になってしまった。思わずきゅっと目を瞑ると、う"…っという聞きなれない声が、聞こえてきた気がした…。