「ふう…」
翌朝。ソファーで目が覚める。少し身体が痛いのはたぶん…ここで寝たせい。ベッドの方を見ると、まだ眠っているかなこちゃん。自然と笑顔になる。支度をして、ロビーで軽く食料を調達して、もう一度ベッドを見てみる。
「おはよう、ございます…」
「おはよう、かなこちゃん」
顔色は良くなっているようだけど、無理はさせたくないからね。支度を終えた彼女に朝食を勧め、今後の事について話す。
「今日は、近場を歩こうか」
「…あの!」
少しの間の後に大きな声を出すと、かなこちゃんは意外な提案をしてきた。
「シロガネ山、行きたいんです…」
シロガネ山…?あんな険しいところに…?とりあえず理由を聞いてみよう。
「ん?どうしたんだい?急に。せっかくだから、サファリゾーンとかも悪くないよ」
「…行くんでしょう?ツツジさんと。石の採掘に…」
…。誰から聞いたんだ?それにボクは、自分で行くからと言って断ったんだけどな(ツツジさんには泣きつかれたけどね…)?
「うん…その事はもう、断ったんだ。だから気にする事…「ダイゴさんの趣味も!たまには…理解しようかな、なんて…」
「かなこちゃん…」
シロガネ山なんて、危ないところだから、本当はあんまり勧めたくない。けど今ボクたちは、カントーにいる。どんなに危険だと言ったってたぶん…かなこちゃんは聞いてくれない。彼女は彼女なりにボクの趣味を、理解しようとしているのだから。
「うん…その代わり、約束して?ボクから絶対に離れないで」
「はい…、もちろん!」
何でそんなに嬉しそうな顔をするんだ。叱る事ができなくなる…。そう、かなこちゃんは、それを自然にやってしまう子なんだ。そんな顔を見せられたら、ボクが断れないのもわかるだろうに…わからないのかな?本当に。ひとまず今日はシロガネ山の入口にあるポケモンセンター目指して、チャンピオンロードのゲートから歩いていく。
「遠いですね…」
「無理していないかい?かなこちゃん」
ボクもシロガネ山には行った事がないけど、ひとまず歩いて先を急ぐ。病み上がりの彼女をかばいながら歩いているボクは、この後、自分の具合が悪い事に気づくんだ…。