「何か…不思議なパワーを感じますね…」
「うん…石のパワーはやはり、計り知れないな…」
パワースポット、と呼ぶのはどうかと思ったけど、それでも観光客らしき人たちはちらほら。少しだけ石から出る気を受け取って、帰ろうとしたら。
「あ、ヒビキくんですよ!」
またしても出会っちゃうなんて…運命、なのかな?前にこっちに来たときに、シルフカンパニーの前で会った、ヒビキくん。彼もダイゴさんの事を覚えていたみたいで、二人で何か盛り上がってる。
「フォレトスを探していたんだ、よかったらボクのダンバルと交換しようよ」
いきなり聞こえてきた会話。ダイゴさん…自分で捕まえないんだ…。 せっかくこっちに来てるのに、とか思ったり。気づいたらヒビキくんはいなくなっていて、ダイゴさんが話しかけてきた。
「かなこちゃん、もう少しだけ待ってて?」
「はい…」
全然平気なのに…私、顔に出てたのかな?ダイゴさんの気遣いは嬉しいけど。しばらくして、ヒビキくんが戻ってくる。
「…お待たせしました!」
元気いい声が聞こえてきたと思ったら負けじとよーし、交換だ!とテンション高めのダイゴさん。…ふふ、子供みたい。しばらくは微笑ましく見てたんだけど…、何か途中から、軽く引いてしまった私がここに…。
「このポケモン、すごくきみになついているね。もしかして、鋼タイプのポケモン好き?」
「…はい!」
「やっぱり!わかるよ、あの質感!ひんやりと光る身体!鋼タイプならではだよね。なかでもダンバルは、ギューッと抱きしめたときの、こちらを拒絶するようなゴツゴツしたフォルムが、ポケモンの孤独と気高さを感じさせてくれて……」
「は、はあ…」
「まあ要するに、ボクのメタグロスは強くてかっこいいってこと!」
……。ダイゴさん……。さすがのヒビキくんも、ちょっと引いてる…。沈黙にハッとなったのか、もうこんな時間か!と話を終わらせようとしてる。
「とっても楽しかった、ありがとう!それじゃ、かなこちゃんが待っているから、失礼するよ」
「はい、ではまた。かなこさんも!」
可愛い笑顔を向けてくれるヒビキくんに、ちょっとだけ、ユウキくんを思い出した。ダイゴさんは何事もなかったかのように私の手を握ると、他には行きたいところあるかい?と聞いてくる。
「いやもう…、ダイゴさんに任せます…」
そう曖昧に返事すると飽きたのかい?って心配してくる。だったら少しだけ、心配させちゃおうかな。
「ダイゴさん、またダンバルのタマゴを孵したんですか?」
「…え?」
いきなりそんな事言い出したから焦ってる…ふふ!その顔がいつになく不思議だったから、さっきまで感じてた軽蔑感?はなくなってしまった。
「ああ…ボクはねかなこちゃん…ただみんなに、メタグロスの良さを知ってもらいたくて…」
今度はシュンとしちゃってる。まだまだ、私の知らないダイゴさんがたくさんいるんだな…。ちょっと嬉しくなったから、繋がれた手を強く握り返した。