「すまない……俺が悪かった…」 「ごめんなさい…流石に私もこうなるとは…思わなかったです……」 二人してうなだれた先には、見るも無惨な形の肉まんたち。 やっぱり手伝うんじゃなかった……自分のだけならばまだしも、司馬昭殿の分までダメにしてしまうだなんて。 とりあえず無言のままそれらを蒸し器に入れたところで漸く口を開いた。 そこまで気まずくて口が開けなかったから……仕方なかったのだ。今更作り直そう、なんて言えやしない。 「肉まんだって、見た目だけじゃねえよ!兄上だって分かってくれるって!」 「でも…純白の白肌は所々肉を露呈し、挙げ句膨らみもままならないものでは…」 「タネの味は梨の舌が大丈夫だっつったんだ。大丈夫だろ…!」 「…責任転嫁はやめて下さいね…!」 確かに司馬昭殿の作った肉まんのタネは美味しかったが、最悪司馬師殿が「不味い」と言ったら……そこに司馬昭殿の逃げ道が出来てしまう。 「梨が美味しいと言った」となれば、肉まんを愚弄した凡愚として標的が私にすり替わる……くそ、まんまと策にハマったなコレは……! 蒸しあがった聖籠を抱えた司馬昭殿の背を追い、司馬師殿の部屋を目指す。 勿論、司馬昭殿が不要な事を言わないように見張り、さらに最悪の結果が生じた場合にすぐ逃げられる為だ!肉まんの評価が気になったんじゃない、断じて! 部屋にまで入っては流石に不審がられるだろうと、戸口に張り付いて中を伺う事にした。 「あ、兄上…今朝はすみませんでした…」 「……まぁ、今朝の事は過失だと認めてやらんこともないが…それは肉まんだな?」 「と、特製で見た目は悪いですけど味はいいですよ……ッ?」 「……………。」 まずい。無言だ。 うっすらと怒気が肌に当たっている気がしてならず、さらに耳と目を凝らす。 「ほう……これだけ無惨な物を今まで私は見たことがないな……」 「あー…えっと…実は梨が手伝うってきかなくてー……」 『馬鹿……!!!』 やはり言い逃れた司馬昭殿の言葉に怒る間もなく、私は戸口から離れて逃走する算段を立てた。今すぐ動いては、音と気配でバレてしまう。 目の前に捕食者がいて逃げられない苦痛が分かるか、司馬昭殿! 「……。……兄上?」 「分かった、これは対価として受け取ろう。」 「え?い、良いんですか??」 「良いと言っている。私は軍議の準備で忙しい、用が済んだなら立ち去れ。」 ずいぶんアッサリと怒気を収めた司馬師殿に追い出され、司馬昭殿が部屋から出て来た。その顔はまさにポカーン。 そっと顔を覗き込めば、慌てて顔を引き締めるんで面白い。 とにもかくにも、今彼に言わねばならないのは…… 「……今度は私に対価を用意してもらいますよ、司馬昭殿…?」 「え?……あ…あー…スミマセン……」 それじゃ、あの肉まんをきっちり美しく作ってもらって、司馬師殿と一緒に食べよう。あの嘘の弁明も兼ねて、ね。 ぶきっちょ
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