「今日こそはやる……!」 −−やったるんじゃ…! そう意気込んだ私は、直線コースの長い道を猛然とダッシュしていた。 …気合いを集中させたのは足の裏。イメージは水の上を走る事! そして、ここだと思った瞬間に両足を宙に解き放ち両足の動きを止めて…−−! −−…そして無様にひざ小僧をズル剥くのである。 膝を体育座りに抱えて傷口を覗くと、泣きたくなる程の擦り傷が出来ていた。 肉の色はサーモンピンク…うわ、血が滲んで来たのを見つめてたら痛覚がキた…! 「うぁぁあ!いっっったい!!」 「おいおいおい何やってんのよ梨ー?!」 もう黙っていられなくて叫んだ瞬間、ぶあっと風が吹き抜けて頭上に影が落ちた。 陽気な声に顔を上げれば、そこには悟空の姿。 そんな外見に似合わず、彼は随分と過保護な面があった。ナタ殿の為に術を考えていたり、清盛殿の為に林檎を探しに行っていたり… 今もそうなのか。何故か水と酒が別に入った小さな瓢箪と包帯が懐から出て来たのを目の当たりにしてしまった。 「酒吹き掛けるぜ、染みるから歯ぁ食いしばれよー?」 「うぇー、汚っ。」 「汚いっておまっ…」 水で砂を落とし、消毒の酒を吹き掛ける。他愛もないやり取りは拒否じゃないことを彼は分かっている。それ故に容赦なく消毒してくれやがったので、出そうになった呻きは必死で消すのみ…! それでも隠しきれずに顔をしかめていると、悟空は何故こんな事になったのかを詰め寄って来た。 ……何故?そんなの簡単だ。 「雲に乗ろうと思って。」 「…………はーン?」 「いやだから、悟空雲に乗ってるでしょ?移動するとき。それに私も乗れるかなぁと……」 (°Д°) この顔文字の顔を、まさか本当に人の顔で見ることになるとは…。私はツイてるんだね、うん。 はぁー、と長い溜め息の後、顔を片手で覆ったまま彼は口を開いた。まあほとんどは罵詈雑言だったけど。 「ばっか…俺は妖魔なんだからこれくらい出来て当たり前、お前はニンゲンなんだから無理なの!」 「なんで?私悟空より強い自信あるけど?」 売り言葉に買い言葉。 望むところだと息巻いたが、悟空は買うつもりがなかったのか軽くいなされてしまって試合終了。なんだよもう。 そしてその時丁度包帯を巻き終わり、手当てが終わったらしい。一度ぽんとその上から叩かれ「いっ…!」っと声を漏らしてしまう。 にたりと笑われたらバツが悪い事この上ないんですけど…? 「なァに、立てねぇの?」 「たっ…!立てる!馬鹿にしない……っあでっ!」 「『あでっ』って……。もーちっと色気の有る痛がり方出来ねーの…?」 私がしっかり立ち上がったところで小突いてきた悟空に、健康アピールを兼ねて蹴りを入れてやる。 それでも雲を使わず私と歩幅を合わせてくれるあたり、彼は相当な『過保護』なのだろう。 ま……差し出された肩に半分体重を預けてひょこひょこと並んで歩くのは、悪くない…気がする。 「そーだ、今度雲に乗せてよ!」 「梨は重いから乗れるか分からねえぜー?ウキキッ!!」 「……やっぱりいつかシメる!」 悪優友
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