「…………。」 「あの、貴女は……」 「あ、いえ、聞こえてます。」 「それでしたらお答え戴きたいのですが…」 そんな、今冷静に受け答えをしろという方が無茶だ。 とりあえずは名乗るのが良いだろうと口を開きかける。何故なら。 『……後ろ三人の視線が。ね…』 「かぐや、こいつもアンタが喚んだのか…?」 「いえ…わたくしは貴方方しかお喚びした覚えは…」 「ならば奴は妖魔の類ではないかッ?!」 「待って。何か言おうとしてる。」 最後の一言で、8つの瞳が全て私に張り付く。言わずもがな居心地は最悪。 言葉を紡ごうとした口は、無意識に一文字へと戻ってしまっていた。 無用なことを言って危害でも加えられては堪ったもんじゃない。ここはダンマリが利口でしょ。 そんな私の態度に気付いたのか、やけにキラキラした兜の男が訝しげに目を細める。 「……?口が利けぬのか?」 「んな馬鹿な。……怖がらせちまったか?」 「……………。」 「えーと……とりあえず聞くけど、アナタは人間?」 1番小さな少年は、私に近付いて身を屈めながら可愛らしく首を傾げた。 当たり前のことを、信じられない程真剣な目で問い掛けてくる。 未だ声を出さないまま一つコクンと頷いて肯定の意思は示しておいた。 『なんなんだ、この人達は。』 槍、刀…それから何だか訳の分からん羅針板、白塗りの女の人の後ろには、ふわふわと三つの鏡が浮いている。 「仙界の気も妖魔の気も感じません…」 「じゃあ人間って事は確かかな。」 「随分奇っ怪な格好をしているな。」 奇っ怪なのはお前らだろ、 すんでで言葉を飲み込んで、尻餅をついたままだった状態から立ち上がった。全身ずぶ濡れ、気持ち悪いことこの上ない。 正直、言葉を発するのが嫌なほど、不機嫌。 「どうやって此処に来たのだ?」 「……川に、落ちました。」 「あー、通りでずぶ濡れな訳…。けど、この辺に川なんてねえよな?」 「ッ……!夜中!橋の上で!急に突き落とされたんです!」 「どーうどーう!…おかしいね、今真昼だよ?」 不機嫌故に声を荒げたが、どうも話が噛み合わない。 極めつけの時差。あまりにもおかしい。 幾分冷えた頭で周りを見渡せば、地表は赤く、空は黒に呑まれていた。 これで昼間だと断言する神経が分からない。 「…ここ、どこですか。」 「何処、と言われると答えづらいな…」 「…世界の、終わる所だ…ッ!」 ここまで厨二をこじらせた人たちもなかなかいないだろ。なんだって?世界の終わり? 冗談じゃない、今すぐ私を元の世界に返せ! ……なんて強く言えるわけもなく、私は必死に睨みつける事しか出来ないのだが。 心の端で生まれた、現実には起こりえない現象が起こってしまった、というほんの少しの邪推を含めて。 「恐らく…私の術式に巻き込まれてしまわれたのだと思います…」 「俺たちみたいに飛ばされて来たってことか?」 「はい。…申し訳ございません……」 白塗りの女の人は深々と頭を下げると、しっかりと私を見た。 「私の名前はかぐや。貴女様が呼び寄せられたのも何かの御縁…共に、妖蛇討伐にお力をお貸し頂けますでしょうか?」 「………はい?」 思わぬセリフに、疑問形で投げかけたはずの肯定文は、そのまま肯定文として受け取られてしまったようだ。 微笑んだ彼女と、男三人。 今私が知るのは、彼女の名前だけだというのに! かぐや姫
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